日本臨床プロテオーム研究会要旨集
第1回日本臨床プロテオーム研究会
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研究発表
全身性エリテマトーデス患者血清にみられる臓器特異的な自己抗体の解析
*武内 徹中西 豊文*清水 章
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p. 20-

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抄録
膠原病は自己成分に対し免疫寛容が破綻し全身諸臓器に慢性炎症を来たす難病で、患者血清中には多くの自己成分に反応する自己抗体が含まれる。膠原病の病態は多彩で、その中でも臓器特異的な自己抗体を解析することは膠原病の病因や病態を解明する上で重要である。 我々は、膠原病の代表的な疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)血清中にみられる自己抗体をプロテオミクスにより解析するために、1)二次元電気泳動とMS、あるいは2)免疫沈降法で精製した試料の一次元電気得動とMSとの組み合わる二つの手法で行った。抗原は市販の肺癌および腎癌患者由来の腫瘍組織抽出蛋白およびHEp-2細胞株抽出液を用いた。抽出蛋白を二次元電気泳動し、PVDF膜に転写し、患者血清と反応させた後、HRP標識抗ヒトIgG抗体を用い化学発光法で自己抗体を検出した。また、電気泳動したゲルを銀染色し、先に行ったウエスタンブロットの結果と一致するスポットを切り出し、ゲル内でトリプシン消化し、MALDI-TOF/MSにて解析した。また、患者血清より精製したIgGから患者IgGセファロースを作成し、抽出タンパクと免疫沈降した。免疫沈降で得られた試料を電気泳動し、銀染色を行った後、得られたバンドをMS解析した。その結果、自己抗原としてαエノラーゼ、β-アクチン、protein phosphatase、セロトニンレセプターが得られた他、腎癌由来細胞抽出蛋白(50kDa、pI7.5-8.0)および肺癌由来の細胞抽出蛋白(30kDa、pI5-5.5)に特異的に反応する蛋白をそれぞれ認めた。 膠原病の病態は多彩で、診断だけでなく病因や病態の把握のためにバイオマーカーが必要であり、これらバイオマーカーの解析にプロテオーム解析が有用であると考えられる。
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