日本臨床プロテオーム研究会要旨集
第1回日本臨床プロテオーム研究会
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研究発表
精子受精能獲得過程でのリン酸化・脱リン酸化に関するプロテオーム解析
*藤ノ木 政勝
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p. 8-

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抄録

ヒトも含めた哺乳動物において、その精子は射精された直後の状態では卵と受精する事はできない事が知られている。輸卵管膨大部付近で採取された精子や数時間の培養された精子は卵と受精する事ができるようになっており、この精子の性質の違いを「受精能獲得」と呼んでいる。受精能を獲得した精子は、頭部で先体反応を、尾部で超活性化を起こしている。受精能獲得は主にタンパク質リン酸化・脱リン酸化によって調節されていると言われているが、精子タンパク質の可溶化には幾つかの難点があり充分な解析が行なわれているとは言い難い。そこで本研究ではまず精子の可溶化法を検討し、次いで受精能獲得の過程で起こっているタンパク質リン酸化・脱リン酸化の検出を行なった。  モデル動物として受精能獲得の表現型が明確なハムスターを用いて実験を行なった。精子は5M尿素、1Mチオ尿素を含む溶液で頭部の核を除く全構造体が可溶化できた。得られた精子可溶化液から電気泳動-ウエスタンブロッティングもしくはIMAC-SELDIプロテインチップシステムによってリン酸化もしくは脱リン酸化タンパク質の検出を行なった。その結果、71種類の受精能獲得に伴って経時的にリン酸化・脱リン酸化されるタンパク質を検出した。  今回、核を除く全精子タンパク質を可溶化し、受精能獲得の過程で起こる精子タンパク質のリン酸化・脱リン酸化を網羅的に検出した。射精後から受精可能になるまでに起こる精子の反応は受精能獲得だけではなく、今回の検出では厳密に受精能獲得のみに関わっているリン酸化・脱リン酸化だけを検出した訳ではない。従って、今後は今回検出したリン酸化・脱リン酸化タンパク質について精子内でのどの反応と関連があるのか検討を行なっていきたいと考えている。そしてこれらの結果として受精能獲得を調節するシグナル伝達機構が理解されるものと期待している。

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