抄録
近年、疾患プロテオミクスにおいては、臨床への応用がますます求められるようになってきている。すなわち、新規疾患マーカーの発見や、発症メカニズムの解明、そして創薬ターゲットの探索などである。我々は、等電点電気泳動にアガロースゲルを用いた二次元電気泳動(アガロース2-DE)法を用いて蛋白成分を分離・精製し、ゲル内消化後LC-MSによって蛋白質を同定する手法を用いて、主に分子量10万以上の高分子量蛋白質を対象に、内分泌疾患や糖尿病、各種がんなどにおいてプロテオーム解析を行ってきた。原因不明の遺伝性侏儒症ラットrdwのプロテオーム解析においては、原因遺伝子がチログロブリンであると特定することができ、発症に至るメカニズムを解明することができた。また、前立腺癌細胞LNCaPのアンドロゲン非依存性獲得に伴うプロテオーム変化を調べたことから、前立腺癌の新規マーカー蛋白質の発見につながった。さらに、手術検体を用いた大腸癌の癌部・非癌部の比較によって、大腸癌特異的に発現の変化を認める蛋白質を多数同定することができた。それらの中には、癌部・非癌部間で分子量の異なる興味深い蛋白質も検出され、癌特異的な翻訳後修飾を受けている可能性が示唆された。