抄録
<背景>
間質性肺炎は予後不良の疾患であり、時に急性増悪と呼ばれる致死的な病態が出現する。急性増悪に明らかに有効といえる薬物療法は確立されていないが、一般的にステロイド大量療法が用いられ、免疫抑制剤も併用される。さらに我々はARDSに対して効果を認めるエンドトキシン吸着療法(PMX療法)を行い、一定の効果を認めている。
<目的>
間質性肺炎の急性増悪症例の血清のプロテオーム解析を行い、急性増悪に関連するタンパク質を同定する。またPMX療法の効果に関連するタンパク質を同定する。
<方法>
PMX施行開始後30日以上の生存を認めた症例(奏効例)と認めなかった症例(無効例)の2群間でPMX施行前後の血清タンパク質発現の異常を解析した。、間質性肺炎急性増悪症例6例の全血清75㎕からアルブミンなど比較的量の多い血清タンパク質とそれ以外のタンパク質をアフィニティースピンカラムで分画し、分画されたタンパク質をさらに蛍光二次元電気泳動法を用いてタンパク質発現プロファイルを作成した。
<結果>
奏効例:3症例、無効例:3症例の解析では、2群間で、約1215タンパク質スポットの中から44タンパク質スポットの有意な発現差を認めた(p<0.01)。奏効例の解析ではPMX療法前後で発現が有意に変化したものは27タンパク質で、これに対して無奏効例で有意に変化したものは10タンパク質であった。奏効例においてはPMX施行により約50倍もタンパク質発現が低下を認めたスポットも存在した。
今回の解析で発現異常を認めたタンパク質は、間質性肺炎急性増悪の予後のbiomarkerやその病態に解明に役立つと考えられる。