2017 年 5 巻 1 号 p. 38-40
症例は41歳女性。種々の薬剤,物質に対するアレルギー症状および気管支喘息の既往を有し,30歳の時に慢性関節リウマチと診断された。2014年にHLA3ミスマッチの母をドナーとして血液型一致生体腎移植を施行した。術前の免疫抑制剤としてタクロリムス(TAC),ミコフェノール酸モフェチル(MMF),メチルプレドニゾロンを開始したところ,即座に炎症反応の急性増悪と全身の多発関節痛を認め,関節リウマチ(RA)の急性増悪が疑われた。TAC,MMFを中止したところ,状態は軽快した。その後TACからシクロスポリン(CyA)に変更し,さらにステロイドはプレドニゾロンに変更し,MMFを再開したが,RA様症状は悪化することなく,腎移植を施行することができた。自験例のごとくTACを含む導入免疫抑制剤服用によりRAが増悪した報告は稀有であった。リウマチ症状の増悪の機序についてはいまだ不明だが,本症例のように多彩なアレルギー症状を有し,免疫抑制剤導入後にRA症状が増悪するようなまれな症例においては,血清リウマチ因子や抗CCP抗体を用いた正確な評価とTACに対する免疫学的側面からの評価が,薬剤変更を検討する上で重要だったと反省させられた。