抄録
本稿では、『風と共に去りぬ』(Gone with the Wind, 1939 年)におけるス カーレット・オハラ/ヴィヴィアン・リー(Vivien Leigh)の演技の特徴について分析する。まず、映画における役柄と、俳優のパフォーマンスの関係の議論に先んじて、小説『風と共に去りぬ』(1936 年)に目を向け、ヒロインのスカーレット・オハラを演技者として再定位する。次に、映像におけるリーのパフォーマンスに焦点を当て、スカーレットが他の登場人物に対して演技をしていることが、映画における自然主義的演技との差異や、型の演技によって提示されていることを明らかにする。最後に、リーのパフォーマンスを同時代のハリウッド映画スターと比較することで、リーは、既にスター・ペルソナを確立しているハリウッド・スターの演技スタイルと異なり、彼女自身の存在を役の背後に隠し、小説版の身振りを模倣することや、観客にスカーレットの心理を容易に想像させるようなコード化された身振り表現を通してスカーレット・オハラを演じたのであると結論づける。