抄録
組合せ的階層分類法における重要な概念の1つに"空間の歪み"がある.空間の歪みはLance & Williams (1967)によって初めて導入され,その後DuBien & Warde (1979),Nakamura & Ohsumi (1990)によって数学的な定式化がなされた. これらの論文における空間の歪みは,用いる手法(更新距離)のパラメータとの関係で論じられ,データとの関係は扱われなかった.つまり,いかなるデータを解析しているかによらず,同一の手法を用いていれば同一の空間の歪みをもつと解釈されていた. しかしながら,我々はこの現象が手法の違いのみに依存するのではなく,解析するデータによっても影響を受けることがあると考え,手法(更新距離)とデータの両方を考慮した空間の歪みの新たな指標を提案する.加えて,新指標に基づき,歪みをコントロールする組合せ的階層分類法を提案する.最後に,Peay (1975)のデータを用い,新指標によるいくつかの組合せ的手法における空間の歪みの評価を行う.また歪みをコントロールする手法による解析結果についても比較検討を行う.