2021 年 9 巻 1 号 p. 1-
重要な要点
1) 本研究のdual energy computed tomography(DECT)では,3-material decomposition 法に関する解析がユーザーに開放されているため,各種パラメータの関係性およびその原理を解明することができる.
2) 仮想ヨード除去画像virtual non-contrast(VNC)及び仮想カルシウム除去画像virtual non-calcium(VNCa)は,仮想単色X 線画像virtual monochromatic imaging(VMI)をベース(basis image)として作成されるため,画質はVMI のノイズ量に大きく左右される.
3) パラメータ設定画面に入力するVMI の高keV と低keV のエネルギー域は広げるほどいいわけではなく,VNC 及びVNCa のCT 値及びstandard deviation(SD)値のバランスを考慮した上で設定することが重要である.
4) 外挿するヨードとカルシウムの傾きは,入力した2 種類のVMI のエネルギーによって既知の傾きとして求められるため,安易に物質弁別効果のために変更してはいけない.
5) プロットする基準物質の組合せもVNC 及びVNCa のCT 値及びSD 値のバランスを考慮した上で設定することが重要である.
要旨
【目的】本研究は3-material decomposition 法に関する画像解析パラメータの関係性及びその原理を解明する.そして,パラメータの調整に着目し,血液・ヨード及び血液・カルシウムにおけるVNC 及びVNCa の画質改善及び弁別効果の向上を目的とした.
【方法】マルチエナジーCT ファントムで撮影を行った.挿入物は3 種類の血液,2 種類の血液+ヨードの混合物,2 種類のカルシウム,脂肪,水,脳,合計10 本の固体ロッドとした.DECT で取得されたraw data より,40〜135 keV の範囲でVMI を作成した.画像解析パラメータの検討は,①VMI におけるエネルギー毎の各固体ロッドのCT 値とSD 値を計測した.②計測された結果から40〜80 keV の範囲内で高keV と低keV の組合せを変化させ,VNC 及びVNCa を作成し,対象とする固体ロッドのCT 値及びSD 値を計測した.③最適なVMI のエネルギー組合せ下での各基準物質の組合せを変化させ,VNC 及びVNCa を作成し,対象とする固体ロッドのCT 値及びSD 値を計測した.
【結果】①全ての固体ロッドにおいて,60 keV 時のVMI のSD 値が最も低かった.②最適なVMI のエネルギー組合せは60 keV と70 keV であり,その際のヨードおよびカルシウムの傾きはそれぞれ0.70,0.78 であった.③最適な基準物質の組合せは脳と血液であった.