抄録
二元系置換型合金の規則-不規則転移挙動を理解するのにこれまで提案された種々の初等的モデルについてまとめた。これらのモデルから求めた二元系体心立方格子型合金と面心立方格子型合金のエントロピーの計算値と実測値を比較し,各モデルの評価を行った。その結果,これらのモデルのうち,Kikuchiにより提案されたクラスター変分法が,二元系置換型合金の規則-不規則転移を説明するのに優れた方法であることが判った。
二元系侵入型合金における規則-不規則転移の応用例として,IVA金属(チタン,ジルコニウム,ハフニウム)の酸素固溶体を取りあげ,これらについて解説した。前報で解説した二元系置換型合金と比べ,侵入型合金に関する秩序-無秩序相転移モデルは未発達でである。二元侵入型合金で観測された秩序-無秩序相転移の転移エントロピーの実測値を統計力学を用いて計算された値と比較検討した。本解説では,秩序-無秩序転移温度以下で観測された非平衡状態における熱容量異常についても議論した。