本研究では,50%に水分を調製した各種澱粉(A型:とうもろこし,うるち米,もちとうもろこし,もち米,B型:馬鈴薯)に対し600MPaの高圧処理および80℃,120℃の加熱処理を行い,処理直後および保蔵後でのDSCによる氷の融解潜熱を測定した。また,このDSCのサーモグラムから各種澱粉ゲル中の水の存在状態を比較検討した。
その結果,高圧処理では,A型澱粉がB型に比べてサーモグラムの形状に大きな変化が認められた。一方,加熱処理では,B型澱粉の方が加熱の影響を受け易かった。また,澱粉の種類にかかわらず,高圧処理を施した澱粉ゲルのピークトップは0℃付近に存在していることから,水が主に自由水で構成されていることが示された。一方,加熱処理による澱粉ゲルのピークトップは0℃以下であり,束縛水の多いことを示していた。結晶化度が大きいと考えられているもち種(もちとうもろこし,もち米)は,うるち種に比較して,加熱および高圧処理後の経時変化に伴い,不凍水の増加が顕著であった。
以上のことから,加熱処理による糊化澱粉と高圧処理による変性澱粉では,澱粉への水の侵入機構や,処理した澱粉で形成される分子ネットワークの分布状態が異なると考えられた。
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