熱測定
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蛍石型化合物の高温熱容量
大橋 東洋有田 裕二松井 恒雄
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1997 年 24 巻 3 号 p. 127-137

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抄録

蛍石型構造を持つ化合物の高温熱容量測定の結果,ハロゲン化物およびアクチニド酸化物では,ともに融点の約8割の温度で相転移が見られた。その転移機構について,ハロゲン化物と酸化物の2種類に分けて解説した。
蛍石型酸化物であるUO2はその転移機構が,電子-正孔対生成に起因するものであるという意見もあるが,ハロゲン化物も酸化物も中性子回折により動的なFrenkel型クラスターの存在が確認されており,転移機構としてこれらのクラスターの濃度の急激な変化が関与していると考えられる。添加物入りの蛍石型酸化物の転移機構が,ハロゲン化物と同じであるかどうかを判断するのは現状では困難であるが,それぞれ次のような特徴がある。ハロゲン化物では転移に伴うλ型ピークが熱容量曲線に明確に見られた。また,添加によって生成するクラスターの影響により,転移温度が低下する場合としない場合が存在した。一方,アクチニド酸化物では,転移前に急激な熱容量の増加と,転移後に熱容量がほぼ一定となることが観察された。また,ウラン酸化物では,添加物の価数によって熱容量の急激な増加開始温度,欠陥生成エンタルピー・エントロピー等に違いが見られた。これらの転移は結晶の幾何学的な特徴と関連があり,その幾何学的な特徴を表すパラメーターとしてイオン半径が考えられる。この転移機構を説明するには,イオン半径など原子を剛体球として取り扱うパラメーターの他に,別のパラメーターも考慮に入れなくてはならないと思われる。

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