抄録
相転移現象の研究において,熱容量測定は有力な手段である。一つは如何なる相転移においても熱容量異常は現れることであり,もう一つは熱容量測定からギブス自由エネルギーを求めることができるからである。相転移は二つに分類される。連続転移と不連続転移である。前者はいわゆる2次転移を含むものであって,後者は従来のいわゆる1次転移と慣習的に呼ばれている。平均場近似の枠内では連続転移で熱容量がとびを示すが,より高い近似あるいは厳密解では熱容量異常は単純なとびではない。現実の場合は,後者がほとんどである。この場合,臨界指数およびスケーリング則が相転移現象を理解するのに有効である。測定される量としては,臨界振幅もある。これは相転移を特徴付ける有効なパラメーターであるが,これまではあまり着目されていない。不連続転移では潜熱が現れるが,この相転移は平衡熱力学よりはむしろ非平衡熱力学の観点より解析されるべきである。このような立場から熱容量スペクトロスコピーは有用な測定法である。