比較眼科研究
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Tremor, zitterおよび自然発症てんかんラット(SER)にみられた視覚器障害
久世 博山村 高章堀 正樹岡庭 梓芹川 忠夫山田 淳三
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1992 年 11 巻 1-2 号 p. 1-2_21-1-2_31

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抄録

生後6および10~12週齢のtremorラット(+/+, tm/tm), zitterラット(zi/zi, +/+)およびその二重突然変異体である自然発症てんかんラット(zi/zi, tm/tm, Spontaneously Epileptic Rat, SER)ならびに対照としてKyo: Wistarラットの雄各5匹を用いて,眼科学的検査を実施した。

SERおよびその親世代ラットであるtremorラットでは眼底観察において,異常は認められなかったが,zitterラットでは,網膜動脈の軽い蛇行および狭窄を認めた。SERおよびzitterラットのERGでは,aおよびb波電位の増高,b波潜時の延長,律動様小波の分裂ならびに不明瞭化を認めた。網膜ドパミン含量の比較では,zitterラットはKyo: Wistarラットに比べ,有意な低下を示し,また,SERは低下傾向を示した。一方,tremorラットはERGにおける各波の電位および潜時に顕著な変化はみられず,ドパミン含量においてもKyo: Wistarラットと同様の値を示した。病理組織学的検査ではzitterラットの網膜外網状層と外顆粒層の間に,また,SERでは内顆粒層に空胞形成を認め,一方,視神経においては,両者においてミエリン低形成を認めた。

以上の結果から,SERに認められた網膜の障害はzitterラット,即ちzi/zi遺伝子の存在に基づくものと結論された。ただし,両者の病変は微妙に異なっており,zitterラットの網膜の障害はSERのそれよりも高度と判断された。

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© 1992 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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