比較眼科研究
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原著
ウサギにおける簡易角膜上皮剥離モデル作製法
日高 正泰池田 孝則藤掛 登久野 博司
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1997 年 16 巻 1-2 号 p. 1-2_15-1-2_19

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抄録

ウサギを用いて簡便に角膜上皮を剥離する方法を考案し、塩化ベンザルコニウムによる角膜損傷の修復に及ぼす影響を検討することにより本モデルの有用性について検討した。ケタミン、キシラジンの混合全身麻酔下に、塩酸オキシブプロカインで角膜表面を局所麻酔した。角膜中央に直径5.5mmのトレパンを深さ50μmに設定して円形の切創を施した。フルオレセイン染色して切創部位を確認しながら鋭利なピンセットと湿潤させた綿棒を用いて、円創の内側の角膜上皮を剥離した。再度フルオレセイン染色を行い、術部が完全に剥離されたことを確認した。

角膜上皮剥離直後から経時的に損傷部位をフルオレセイン染色し、その大きさを観察した。フルオレセイン染色部位は経時的に縮小し、損傷作製から72時間後にはフルオレセインにより染色されなくなったことから、損傷部位は治癒したと判断した。

塩化ベンザルコニウムは、0.015%、0.050%の濃度で、また対照として生理食塩水を1日3回、3時間間隔で2日間、合計6回点眼した。1日2回(1回目、3回目の点眼前)フルオレセイン染色を施し、損傷部位の面積の経時変化のグラフから台形法により反応時間曲線下面積(AUC)を計算し、群間で比較した(n=5)。

損傷部位は損傷後72時間までに消失した。損傷直後から72時間後までのAUCは0.050%点眼群で対照群に比較して有意に大きく、塩化ベンザルコニウム点眼により治癒過程の遅延が認められた。

本方法は、均一な角膜上皮剥離モデルを簡便に作製することができ、更に塩化ベンザルコニウムの点眼の影響を検出可能であったことから、点眼薬の角膜修復に及ぼす影響を評価する上でも有用と考えられた。

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© 1997 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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