比較眼科研究
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原著
薬物による角膜内皮創傷治癒効果の評価に有用なフェレット角膜内皮障害モデルの作製
坂本 雄二奥村 直毅小泉 範子沼田 諒平北野 絢嗣山本 真弓駒田 孝文星 信彦
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2013 年 32 巻 p. 15-21

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抄録

我々は新たな角膜内皮研究における点眼療法等の評価に適した実験モデルとして、フェレットの有用性について検討を行っている。これまで、角膜内皮の基礎研究にはウサギが広く用いられてきた。しかし、ウサギ角膜内皮細胞は、障害を受けても自己再生するため、長期の評価には適していない。我々のグループの研究者は、霊長類の角膜内皮細胞が、生体内では極めて増殖能が低いことから、霊長類を用いて角膜内皮機能不全モデルを開発した。しかし、霊長類はその取り扱いに高い技術力を要し、倫理面においても厳格な運用を必要とする。このような状況を踏まえ、我々は、フェレットがウサギと霊長類の中間をなす角膜内皮機能不全モデルの候補となる可能性があると考えた。
本研究では、液体窒素で冷却したステンレスプローブを用いた経角膜冷凍凝固法により、フェレットの部分的角膜内皮障害モデルを作製し、Rhoキナーゼの特異的阻害剤であるY-27632がフェレットの角膜内皮創傷治癒に与える影響を評価した。Y-27632を点眼投与することにより、角膜内皮障害によって生じる角膜浮腫や混濁が軽減され角膜厚は有意に減少し、冷凍凝固処置48時間後に摘出し測定した角膜内皮の創傷面積は、Y-27632群ではコントロール群に対して16.0±3.0%と有意に減少した。また、Y-27632点眼投与により創傷治癒後の角膜内皮密度はコントロール群が1149.0±597.9個/mm2であったのに対し、Y-27632群では1836.3±706.1個/mm2と有意(p<0.05)に高く、一層の多角形の細胞形態に再生された。本研究より、フェレットを用いた角膜内皮障害の新しい動物モデルが確立され、本モデルは角膜内皮研究における点眼治療薬開発に有用であることが示唆された。

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© 2013 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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