2019 年 3 巻 2 号 p. 107-110
本報告では、地域の博物館における、いわゆる博物館資料以外のデジタルアーカイブのささやかな実践事例について、その過程や方法、課題を紹介する。
2017年、神奈川県立歴史博物館は、その前身である神奈川県立博物館の開館から50年を迎えた。これを記念し実施したプロジェクトの一つが「みんなの神奈川県博アーカイブ」である。このプロジェクトでは、当館にまつわる思い出を募集、思い出投稿者の位置をGoogleマップにプロットし「思い出分布図」として公開した。「思い出募集」企画は世の中に多くみられるが、集まった思い出を「分布図」として示した例はこれまでにあまりないだろう。
「思い出の広がり」が可視化されることは、特定の位置に縛られた博物館が持つ可能性の再評価につながる。また当館のような自治体の設置する地域博物館にあっては、つい各自の自治体範囲で活動の枠組みを考えがちであるが、より広い視野での活動を内省的に促す視点につながるものともいえよう。