2021 年 5 巻 s1 号 p. s82-s85
本報告は、デジタル時代において研究者の蔵書や資料が「アーカイブ化」されるという事態の意味を、それらの資料の蓄積自体の系譜に着目し、歴史的文脈に位置付けることを目的とするものである。近代以降、日本では様々な経緯から、研究者資料の収集保存が進められ、アーカイブされてきた。一方で、近代以降、現在までの間に、在野、アカデミアそれぞれの分野において研究者の資料群が如何なる要因で保存され、それがデジタル化されることになったのか、そのインセンティブや背景を比較することはこれまで十分検討されてこなかった。そこで、本報告では、図書館、博物館、アーカイブズ等、様々な機関で取り扱われてきた研究者の資料群の保存の経緯、および21世紀以降デジタルアーカイブとして公開されるに至る過程を複数の事例から分析し、デジタル時代において「アーカイブ化」されることの意味を、その歴史的系譜を踏まえて考察する。