2022 年 6 巻 2 号 p. 86-91
筆者は2012年より、日本のアーティストや学芸員、多様な参加者と協働し、1950-80年代にドイツで構築された学術映像アーカイブ「ECフィルム」の活用に取り組んできた。本稿ではまず、ECフィルムの特徴を生かして企画した、多様な場所や実物の素材、あるいは多視点のゲストスピーカーを組み合わせた上映座談会や、2019年開催の《映像のフィールドワーク》展について概観する。後半部では、特にECフィルムの音楽映像を「再現/再演」する試みを取り上げ、「遠い他者」の経験を写した記録映像のアーカイブを、現代に生きる我々が組み替えながら継承していく方法について考える。