デジタルアーカイブ学会誌
Online ISSN : 2432-9770
Print ISSN : 2432-9762
6 巻, 2 号
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巻頭言
特集:人類の営みのデジタルアーカイブ
  • 東 由美子
    2022 年 6 巻 2 号 p. 74-76
    発行日: 2022/05/06
    公開日: 2022/07/04
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    本特集は、デジタルアーカイブやデジタルデータを用いて、「他者」理解に対する自らの姿勢を意識的に提示しようとする研究領域の紹介を目的としている。この研究領域については、これまで本学会では正面からは論じてこなかった。しかし、他の分野に目を向けてみると、「他者」理解という人類学的な関心を「芸術的に」表現しようとする人類学者や社会学者、アーティストといった人々によって、研究が蓄積されてきているのである。ある者は、古今東西の人類の営みに対する自らの理解のありかたを、デジタル形式を媒介させつつ多元的に表現しようとする。別の者は、読解・分析した既存のデジタルデータを、現在の自分が共感できる形で表現し直そうとする。本特集では、このような研究の実践例として、国立民族学博物館のフォーラム型情報ミュージアムプロジェクト、および4名の執筆者の試みを取り上げる。

  • 川瀬 慈
    2022 年 6 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2022/05/06
    公開日: 2022/07/04
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    本稿では、人文学の将来にむけた創造的な研究成果公開の場の在り方について、筆者自身が携わってきた映像人類学研究の成果発表と議論のプラットフォームづくりの事例をもとに考察したい。人類学とアートの接近と交流という近年の映像人類学研究の潮流を俯瞰しつつ、筆者が創設に携わったAnthro-film laboratory と題した研究会、さらには筆者の職場、国立民族学博物館が刊行する、国際的なオンラインジャーナル、TRAJECTORIAをとりあげ、その目的、活動内容について報告する。

  • 野口 靖
    2022 年 6 巻 2 号 p. 82-85
    発行日: 2022/05/06
    公開日: 2022/07/04
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    一般的に、コンピュータのプログラムなどを利用して可視化されたデータは、ユーザーの客観的な分析を容易にするが、生身の人間の個々の体験の詳細や感情の揺らぎなどがこぼれ落ちてしまうことは否めない。一方で、データの「可視化」と、アートやドキュメンタリーにおけるインタビューを組み合わせることによって互いを補完し、「理解と共感」を引き出そうとする試みがある。本稿では、筆者が関わったアートプロジェクトである「核についてのいくつかの問い」と「東京大空襲証言映像マップ」を紹介し、データの可視化と個のへインタビューによる複合メディアの可能性を論じる。

  • 丹羽 朋子
    2022 年 6 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2022/05/06
    公開日: 2022/07/04
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    筆者は2012年より、日本のアーティストや学芸員、多様な参加者と協働し、1950-80年代にドイツで構築された学術映像アーカイブ「ECフィルム」の活用に取り組んできた。本稿ではまず、ECフィルムの特徴を生かして企画した、多様な場所や実物の素材、あるいは多視点のゲストスピーカーを組み合わせた上映座談会や、2019年開催の《映像のフィールドワーク》展について概観する。後半部では、特にECフィルムの音楽映像を「再現/再演」する試みを取り上げ、「遠い他者」の経験を写した記録映像のアーカイブを、現代に生きる我々が組み替えながら継承していく方法について考える。

  • 松本 篤
    2022 年 6 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 2022/05/06
    公開日: 2022/07/04
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    誰かが残した「私」の記録。その価値に着目したアーカイブづくりに取り組むプロジェクト・AHA!は、大地震から10年目の節目に開催される展覧会の企画を依頼される。筆者は準備の過程で、仙台市の沿岸部に暮らすかおりさん(仮名)と出会う。彼女は、初めての出産を経験した2010年6月11日から育児日記をつけ続けていた。1000年に一度といわれる大災害の経験を、たった1人の育児の記録と記憶から捉え直す。そんな展覧会『わたしは思い出す』は、どのように企画されたのか。本展の着想から開催に至るまでのプロセスをたどりながら、メモリアルとは何か、記憶の継承とは何か、忘却とは何かを問い直す。

第1回DAフォーラム
動向
学会活動から
研究論文
事例/調査報告
  • 武内 樹治, 高田 祐一
    2022 年 6 巻 2 号 p. e16-e20
    発行日: 2022/05/06
    公開日: 2022/04/04
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    文化財の継承・保存・活用にはオープンデータの公開が有用であり、政府によって文化財情報の公開が推奨されている。本研究は、日本全国の文化財に関するオープンデータの取り組みや公開状況を調査し、現状分析を行ったうえで課題を明らかにすることが目的である。調査の結果、推奨フォーマットを利用したうえで指定の項目まで一致したデータセットを公開している自治体はかなり限られており、再利用性に課題があることが明らかになった。推奨フォーマットに準拠した文化財オープンデータ公開自治体を増加させるには、より分かりやすく文化財に適したデータセット作成の仕組みを整備する必要がある。

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