2022 年 6 巻 2 号 p. e11-e15
本稿は日系カナダ人財産没収を主題とする「不正義の景観(LoI)」アーカイブを事例に、デジタルアーカイブが日系カナダ人の想起に与える影響を考察する。LoIアーカイブは学術資料、日系カナダ人の集合的記憶、家族の記憶という3つの側面を持つ。日系カナダ人ユーザーが書いた記事の分析から、ユーザーにとってLoIの資料が家族史として重要である事が示された。ユーザーは感情に着目することで、財産没収が持つ行政の不正義と家族の過去という側面を、共に個別的な家族の記憶として理解する。このような理解は、より大きな集団の物語と個別的な記憶を競合なく並存させることができるデジタルアーカイブの表現の可能性を示唆している。