2022 年 6 巻 s2 号 p. s107-s110
神奈川県立生命の星・地球博物館が収蔵する標本画のデジタルアーカイブの取り組みについて報告する。ここで対象とする標本画とは、生物の分類学的な特徴をとらえ科学的に表現した図画を指す。本資料は、明治~昭和期の菌類学者が、調査研究の過程で採集した菌類(きのこ)を新鮮なうちにスケッチした彩色細密画である。この資料について、デジタル画像の取得、メタデータの整備等のほかに、学術関連情報の調査とデータの追加を行うことで、学術資料として利活用可能なデータベースの作成を試みた。自然史標本で必須とされる標本データ(採集日・採集場所)や、標本画が掲載された出版物(図鑑や論文)、標本画のモデルとなった実物標本の所在、現在の学術的知見に照らした再同定結果を備えることで、学術資源としての新たな価値を創出することを目指している。