2023 年 7 巻 s2 号 p. s83-s86
文化資源の保全と継承、利活用を目的とするデジタルデータアーカイビングの取組みにおいて、複数の主体による情報システム基盤の共同運用やデジタルデータの相互運用には、Webの利用が欠かせない。しかしその際にはデジタルデータの信頼性が課題となる。これに対しては、デジタルデータの「来歴情報」や「不変性情報」の記録と参照によるトレーサビリティの確保で緩和することができる。一方、高い耐改竄性と透明性を実現するブロックチェーン技術を根拠とした、新しいWebのコンセプトであるWeb3が提唱され、実装が始まっている。本稿ではその特徴である「非中央集権」と「トラストレス」の性質に着目し、ブロックチェーン基盤上における「来歴情報」と「不変性情報」の記録による、デジタルデータの信頼性とトレーサビリティの担保について検討する。また2022年3月にACHDA(ASEAN文化遺産デジタルアーカイブ)において実施した、その実践について報告する。