2023 年 7 巻 s2 号 p. s95-s98
アーカイブをめぐる理論的な言説において、ミシェル・フーコーはもっとも多く言及される思想家の一人だと言える。しかしその言及は、『知の考古学』で展開されている独自のアーカイブ概念や、異質な空間をめぐるヘテロトピア概念、また一部の権力論の周辺に偏っている。本稿では、フーコーの初期、中期、後期に渡る思想の展開を、(潜在的な)アーカイブをめぐる思想の発展として位置付け直す見通しを示すことを試みる。具体的には、初期の言説論を資料の中で語られている事柄に関わる議論として、中期のdispositif(装置)論をアーカイブの施設や制度や関連する諸手続きに関わる議論として、そして後期の自己のテクノロジーをめぐる議論を個人レベルでのアーカイブ実践に関わる議論としてとらえ返していく。以上の作業を通して、フーコーの諸概念を、デジタルアーカイブについて考えるための理論的なツールとしてより有効に使えるようにすることを目指す。