抄録
本研究では,荒砥沢ダム(宮城県栗原市)における長期間にわたる地震観測記録にNIOM法を適用して,堤体内の地震波の伝播時間の経時変化を検討した。その結果,(1)2008年岩手・宮城内陸地震において地震波の伝播時間が急激な上昇を示したこと,(2)2011年東北地方太平洋沖地震においても地震波の伝播時間が上昇が見られたが,変化は岩手・宮城内陸地震と比べて小さく,堤体には東北地方太平洋沖地震の大きな影響はないものと考えられること,(3)経過日数の対数にほぼ比例して伝播時間が減少する様子が強震動後に見られることなどを指摘した。