2016 年 26 巻 4 号 p. 154-170
東北地方太平洋沖地震により藤沼ダムが決壊し,死者が発生する惨事となった。検証委員会などによる現地調査・物性調査・解析的検討が行われたが,残留変形解析はいまだ実証性が薄いため,条件を変えてさらなる解析が必要と考える。そこで,本研究では,藤沼ダムの動的応答解析を行い,円弧すべりを仮定した渡邊・馬場法による残留変形解析によって残留変形量を算出し,ダム崩壊に至る変位量の考察を行った。その結果,藤沼ダムの強度パラメーターを推定し,強度低下を考慮しないと沈下量はかなり小さいが,3層のうち上部盛土だけでなく,これまでほとんど言及されなかった中部盛土も強度低下を考慮すると,ダム天端と満水位との高度差程度まで地震時沈下が発生する様子を解析でき,藤沼ダムが崩壊するときの天端沈下量との関係を導くことができた。ダムの沈下が起きた原因として大部分を占めているのは,締固め不足による密度低下とそれにともなう強度低下が挙げられる。