2006 年 10 巻 2 号 p. 125-134
【目的】経鼻経管栄養チューブが嚥下に与える影響について,嚥下造影所見を録画した動画をもとに検討した.
【対象と方法】対象は平成5年以降に当院で行われた嚥下造影検査のうち,チューブ留置と抜去後で,他については同じ条件下で検査が行われ,両者の比較が可能であった63件である.録画した画像を熟練した検者2名で検討し,変化の有無とその内容を記載した.改善があった場合,1所見に対し1点として加算して,全体の変化の程度をスコアリングした.抜去後に改善した所見とチューブのサイズ,走行状態との関係を検討した.
【結果と考察】チューブ抜去後の変化として,喉頭蓋反転改善28件,咽頭残留改善14件,食塊通過改善5件,誤嚥改善9件,嚥下可能となったもの5件が認められた.チューブサイズとの関係をみると,喉頭蓋反転に関して太いチューブで有意に抜去後改善するものが多く,スコアに関しても10Fr以下と12Fr以上で有意差が認められた.咽頭のチューブ走行状態との関係をみると,喉頭蓋反転,咽頭残留,スコアに関して鼻腔と同側の食道入口部に挿入された同側群より交差して反対側の食道入口部に挿入された交差群のほうが有意に改善するものが多かった.走行別にチューブサイズを比較すると,同側群では喉頭蓋反転に関して太いチューブを抜去後有意に改善,スコアに関しても12Fr以上のチューブで有意に改善した.交差群では誤嚥に関して12Fr以上の太いチューブで有意に改善した.チューブのサイズ別に走行状態で比較すると,8Frでは喉頭蓋反転において交差群のほうが有意に改善した.10Fr以上のものでは有意差はないものの交差群のほうが改善するものが多かった.
本研究で,摂食・嚥下障害患者において経鼻経管栄養チューブが嚥下に影響を与えることが確認された.特にチューブのサイズが大きいほど,また交差して留置されている場合に影響を及ぼしやすいことが示唆された.