日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
クッキーの咀嚼・嚥下特性に与えるグルテン構成たんぱく質組成の影響
新井 映子山村 千絵江川 広子城 斗志夫島田 久寛山田 好秋
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2006 年 10 巻 2 号 p. 142-151

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抄録

本研究では,グルテン構成たんぱく質のグルテニンとグリアジンの比率を変化させた5種類の再構成小麦粉を使用して,咀嚼・嚥下機能が減退した高齢者や摂食・嚥下障害を持つ方に適した物性を有するクッキーの調製を試みた.グルテニンとグリアジンの比率が異なるクッキーの破断特性,吸水性およびモデル食塊の物性を,機器測定と官能検査によって評価した.グリアジンとグルテニンの比率を市販小麦粉のそれに近い1:1から1:2に変えた場合,クッキーは破断歪が減少して砕けやすくなり,吸水性が向上して唾液と混ざると滑らかになった.若年健常者による官能検査においても,グリアジンとグルテニンの構成比率が1:2のクッキーは,1:1のクッキーよりも,高齢者食や介護食用のクッキーとして適していると評価された.これらの結果より,高齢者食や介護食に適するクッキーを調製するためには,グルテンに占めるグルテニンの比率を増加させるとよいことが推察された.グルテニンの増加によるクッキーのおもな物性改変要因は,グルテニンが増すことにより,生地調製時にグルテンに吸水される水分が減少し,変わりにでんぷんに吸収される水分が増加して,でんぷんの糊化が促進されたためと推察された.

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© 2006 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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