日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
研究報告
嚥下造影時の食道残留評価法と食道残留の除去法について
黒田 百合藤島 一郎高橋 博達片桐 伯真大野 綾
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2006 年 10 巻 2 号 p. 152-160

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抄録

嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing,以下VF)時の食道所見について統一した評価方法は提案されていない.実際の検査場面では多症例に食道残留を認めるため,今回は食道残留の分類を試み,それを用いてVF時の食道残留の評価を試みた.残留した場合は残留を除去する方法も検討した.【対象】2003年10月~2005年4月の1年半の間にVFを施行し,食道期まで観察した嚥下障害患者234例,男性160例,女性74例,平均年齢73.1歳である.原疾患は脳血管障害98例,肺炎62例などであった.【方法】VF正面像で,増粘剤でとろみをつけた40%硫酸バリウム水 3cc (粘度約5300cp) を咽頭嚥下でBest swallowを認めた体幹角度 (30度,45度,60度,90度) で嚥下してもらい,次の4項目について評価を行った.1)残留の程度 (残留1=なし~軽度残留,残留2:中等度残留,残留3:高度残留),2)残留部位 (上 (部) 1/3,中 (部) 1/3,下 (部) 1/3,上中 (部) 2/3,中下 (部) 2/3,全体) 3) 食道内逆流の有無,4)残留除去法①空嚥下を行う,②体幹角度を上げて空嚥下を追加する,③ゼラチンゼリーのスライス型食塊を丸飲みする,④40%バリウム水を飲む,など.【結果】食道残留の程度,部位は本評価法で網羅できた.食道残留は73.5% (172人) に認めた.残留部位は全体に残留するタイプが最も多く39% (68人),ついで中下 (部) 2/3が24%(41人)であった.食道内逆流は残留を認めた症例の過半数に認めた.食道残留の除去法は上記①~④の方法で効果を認めたが,症例に合わせた方法が必要であった.

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© 2006 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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