日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
食形態の違いによって生じたラット中枢神経核の遺伝子発現の変化
― 離乳期におけるc-fosの発現変化 ―
大岡 貴史弘中 祥司向井 美惠
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2006 年 10 巻 3 号 p. 257-267

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抄録

【目的】哺乳類における摂食機能は,哺乳機能から咀嚼運動をはじめとした複雑な摂食・嚥下機能へと発達変化する.この発達段階においては,中枢神経系の発達および成熟がなされることが不可欠と考えられており,生後一定の期間は摂食・嚥下機能に関連する神経回路の形成が必要とされる.本研究では,吸畷から咀嚼機能を獲得する離乳期の食餌条件の違いによって,摂食に関連する中枢神経核の神経活動に変化が生じるかを検討することを目的とし,c-fos 遺伝子より産生されるFosタンパク(Fos)をマーカーとしたラット脳幹部における中枢神経核の免疫組織学的観察を行った.

【方法】Sprague-Dawleyラットを生後15日目より①早期離乳群(固形飼料を摂取),②未離乳群(固形飼料は摂取させず,人工的に哺乳のみを継続),③対照群(母獣とともに飼育)の3群を設定して実験を行った (各群N=9). 生後19日(P19)および21日(P21)の時点で灌流固定,抜脳を行い,厚さ50μmの冠状断連続切片を作製した.その後,脳幹部の舌下神経核,孤束核,三叉神経脊髄路核中間亜核におけるFos免疫反応陽性(FI)細胞を計測した.

【結果・考察】FI細胞は早期離乳群で最も多く認められ,P19では舌下神経核,孤束核において他の群との間に有意差を認めた,一方,P21の孤束核における有意差はみられず,三叉神経核において早期離乳群>未離乳群>対照群の順にFI細胞が多く発現していた.これらより,離乳期の食餌の差異によって摂食・嚥下に関連する中枢神経核における神経活動および遺伝子発現が変化することが推察された.

【結論】離乳期においてラットに与える食餌が変化することで,中枢神経核における神経活動および遺伝子発現に変化が生じる可能性が示唆された.

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© 2006 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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