日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
臨床報告
姿位の違いにおける嚥下活動の変化
― 頚部回旋および体幹傾斜を考慮した姿位設定 ―
田上 裕記三橋 俊高野本 惠司小久保 晃太田 清人
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2006 年 10 巻 3 号 p. 268-273

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抄録

頚部回旋および体幹傾斜角度の違いにおける嚥下活動の変化について検討した.基本姿位は,セミファーラー位60°とし,頚部回旋および体幹傾斜角度の相互関係を考慮し4つの姿勢条件を設定した.①姿位A:頚部正中位,体幹正中位,②姿位B:頚部30°回旋位,体幹正中位,③姿位C:頚部正中位,体幹30°傾斜位,④姿位D:頚部正中位,体幹15°傾斜位.対象は,健常群として嚥下機能に問題のない健常成人10名,疾患群として脳血管障害者13名とした.健常群では,常温30mlの水を随意嚥下させ,それぞれのピーク時の筋活動量を測定した.測定は日本光電社製MEB-5504を使用し,舌骨上筋群を双極誘導で採取した.一方,疾患群では,4つの姿勢条件で,それぞれ5分間安静の後,水のみテスト,反復唾液嚥下テスト(以下RSST)を施行した.水のみテストはプロフィール,RSSTは判定回数をそれぞれ各姿位間で比較検討した.健常群における筋活動量の変化についてみると,姿位Bの値は,姿位Aの値に比し有意な高値を示し,姿位Cの値は,姿位Bの値に比し有意な低値を示した.疾患群における水のみテストのプロフィールについてみると,姿位Bでは,姿位A,C,Dに比べ正常群が有意に少なかった.RSSTの判定回数の比較では,姿位Aに比べ姿位Bで低値を示し,姿位C,姿位Dでは,姿位Aとほぼ同じであった.以上の結果より,セミファーラー位60°の姿位において,頚部および体幹の相互関係を考慮した設定をすることの重要性が示唆された.すなわち,摂食・嚥下障害者に対し,頚部のみを回旋するのではなく,頚部は正中位に保持した上で,体幹傾斜位にしたほうが有効であると考えられた.

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© 2006 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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