2007 年 11 巻 2 号 p. 104-113
【目的】本研究は,成人重度知的障害者への摂食指導において,認知機能の評価を行うことにより,効果的な摂食指導方法を検討することを目的とした.
【対象と方法】対象は,施設職員より「食べるスピードが早すぎる」「噛まずに丸呑みしている」という主訴で指導依頼のあった,重度知的障害者12名(男性8名,女性4名,平均年齢38.2±11.0歳)である.対象者および保護者に,事前に調査への同意を得た上で研究を行った.対象者の全身状態を調査し,歯科医師および言語聴覚士が摂食機能評価を,言語聴覚士がADL・発達評価を,管理栄養士が栄養評価を行った.その後月1回の割合で,ペーシングを中心とした摂食指導を行った.摂食指導の受容程度により群分けを行い,1年経過後に摂食機能の評価検討を行った.
【結果】摂食指導として行ったペーシングのための皿への取り分け介助を受容した者は,12名中7名であり,その内5名は1年後に摂食機能が向上していた.摂食指導の効果には,認知機能における個人―社会の発達,微細運動―適応の発達が関与していることが示唆された.
【結論】重度知的障害者においては,認知機能を評価に含めた摂食指導方法の開発が必要である.