日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
咀嚼方法の相違が嚥下動態に及ぼす影響
大内 ゆかり
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2007 年 11 巻 2 号 p. 114-122

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抄録

【目的】咀嚼方法の変化が嚥下動態に及ぼす影響を解明するため,クッキーを3種類の咀嚼方法で摂取させ,嚥下反射開始時における食塊先端の位置と嚥下動態および食塊の通過時間の分析を行った.

【方法】咀嚼および摂食・嚥下機能に異常がない健常成人6名(28.5±2.6歳)を対象に8gのクッキー(バリウム含有)を自由咀嚼,回数指定咀嚼,前歯咀嚼の3種類で摂取させ,VF側面像を記録した.嚥下反射開始時の食塊先端の位置は口腔・咽頭領域を4区分し検討した.区分は口腔内領域:OC,口腔・咽頭上部領域:UOP,喉頭蓋谷領域:VAL,下咽頭領域:HYP.さらに食塊の深達度の検討は以下の3段階とした.口腔・咽頭上部領域以降:UOP+VAL+HYP,喉頭蓋谷領域以降二VAL+HYPおよびHYP.食塊の通過時間は,Stage 1+Process,Postfaucial aggregation time(PFAT),Valeculae aggregation time(VAT),Hypopharyngeal transit time(HTT)の領域を食塊が通過する時間を計測した.

【結果】嚥下反射開始時の食塊先端位置は,自由咀嚼および回数指定咀嚼でVAL領域,前歯咀嚼ではHYP が高率であった.食塊の深達度を見ると回数指定咀嚼と比較し自由咀嚼,前歯咀嚼において有意に食塊がHYPまで到達していた.食塊の通過時間は,誤嚥しゃすい領域と考えられる喉頭蓋谷領域の通過時間であるVATにおいて回数指定咀嚼の場合に短縮され,前歯咀嚼で延長する傾向が見られた,

【考察】論義方法の変化が嚥下動態に与える影響を検討した.回数指定咀嚼は嚥下反射が早期に惹起されるため誤嚥予防として有効であり,前歯咀嚼は嚥下反射が遅延するため誤嚥しゃすい可能性が示唆された.

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© 2007 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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