日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
11 巻 , 2 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • ―ゼリー,トロミ付き水を用いて―
    畑 裕香, 清水 隆雄, 藤岡 誠二
    2007 年 11 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2007/08/31
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル フリー

    【目的】直接的嚥下訓練を開始する場合,一般的に水様物より有形態の方が多く使用されている.またゼリーを用いて訓練を行なう場合にも,一部ではスライス状にして食べることが推奨されている.我々は口腔期障害例において,より適切な食物形態を決定するために,口腔から咽頭への送り込みの違いについて,有形態であるゼラチンゼリーと水様物を用いて検討した。

    【対象と方法】1)2005年1月から12月までの間にビデオ嚥下造影検査(VF)を行なった141例(男性77例,女性64例,平均年齢74歳)を対象とした.食物が口腔に入ってから咽頭に達するまでの時問をVF画像から測定し,解析した.検査時の姿勢は水平からの角度を①30-45度,②60-90度に分けて検討した.模擬食品にはゼラチンゼリーとトロミ付き水(粘度約750mPa・s)を採用した。2)口腔期障害を主症状とする6症例を対象としスライス状のゼリーとクラッシュしたゼリーの送り込みついて,ゼリーが口腔に入ってから口峡を越えるまでの時間を測定し,その違いを検討した.

    【結果】1)咽頭への送り込み時間はゼリー7.7±152秒,水3.8±8.8秒であり,水の送り込みはゼリーよりも速やかであった(n=141,p<0.01).また姿勢の違いによる検討では30-45度(n=58)に角度をつけた場合ではゼリー86±17.4秒,水3.6±6.8秒であり,一方60-90度(n=83)に角度をつけた場合の検討ではゼリー7.0±13.5秒,水3.9±10.0秒であった.姿勢の違いに関わらず水はゼリーよりも速やかに咽頭に送り込まれた(p<0.05).2)口腔期障害例(n=6)における送り込みの検討ではスライスゼリー22.5±8.0秒であり,一方クラッシュゼリーでは15.5±8.5秒であった。スライスゼリーよりもクラッシュゼリーの方が口腔から咽頭へ速やかに送り込まれた(p<0.05).

    【考察】口腔から咽頭への送り込みは,①ゼリーよりもトロミ付き水の方が速く,②口腔期障害を主症状とする嚥下障害例においてはスライスゼリーよりもクラッシュゼリーの方が速いことが分かった.以上から口腔期のみに障害を呈する患者に対し直接的嚥下訓練行なう場合,有形態よりも無形態に近い食物を用いる方が望ましいのではないかと考えられた.

  • ―認知機能と摂食機能との関係―
    田村 文誉, 西脇 恵子, 菊谷 武, 井上 由香, 児玉 実穂, 戸原 雄, 小沢 章
    2007 年 11 巻 2 号 p. 104-113
    発行日: 2007/08/31
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,成人重度知的障害者への摂食指導において,認知機能の評価を行うことにより,効果的な摂食指導方法を検討することを目的とした.

    【対象と方法】対象は,施設職員より「食べるスピードが早すぎる」「噛まずに丸呑みしている」という主訴で指導依頼のあった,重度知的障害者12名(男性8名,女性4名,平均年齢38.2±11.0歳)である.対象者および保護者に,事前に調査への同意を得た上で研究を行った.対象者の全身状態を調査し,歯科医師および言語聴覚士が摂食機能評価を,言語聴覚士がADL・発達評価を,管理栄養士が栄養評価を行った.その後月1回の割合で,ペーシングを中心とした摂食指導を行った.摂食指導の受容程度により群分けを行い,1年経過後に摂食機能の評価検討を行った.

    【結果】摂食指導として行ったペーシングのための皿への取り分け介助を受容した者は,12名中7名であり,その内5名は1年後に摂食機能が向上していた.摂食指導の効果には,認知機能における個人―社会の発達,微細運動―適応の発達が関与していることが示唆された.

    【結論】重度知的障害者においては,認知機能を評価に含めた摂食指導方法の開発が必要である.

  • 大内 ゆかり
    2007 年 11 巻 2 号 p. 114-122
    発行日: 2007/08/31
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル フリー

    【目的】咀嚼方法の変化が嚥下動態に及ぼす影響を解明するため,クッキーを3種類の咀嚼方法で摂取させ,嚥下反射開始時における食塊先端の位置と嚥下動態および食塊の通過時間の分析を行った.

    【方法】咀嚼および摂食・嚥下機能に異常がない健常成人6名(28.5±2.6歳)を対象に8gのクッキー(バリウム含有)を自由咀嚼,回数指定咀嚼,前歯咀嚼の3種類で摂取させ,VF側面像を記録した.嚥下反射開始時の食塊先端の位置は口腔・咽頭領域を4区分し検討した.区分は口腔内領域:OC,口腔・咽頭上部領域:UOP,喉頭蓋谷領域:VAL,下咽頭領域:HYP.さらに食塊の深達度の検討は以下の3段階とした.口腔・咽頭上部領域以降:UOP+VAL+HYP,喉頭蓋谷領域以降二VAL+HYPおよびHYP.食塊の通過時間は,Stage 1+Process,Postfaucial aggregation time(PFAT),Valeculae aggregation time(VAT),Hypopharyngeal transit time(HTT)の領域を食塊が通過する時間を計測した.

    【結果】嚥下反射開始時の食塊先端位置は,自由咀嚼および回数指定咀嚼でVAL領域,前歯咀嚼ではHYP が高率であった.食塊の深達度を見ると回数指定咀嚼と比較し自由咀嚼,前歯咀嚼において有意に食塊がHYPまで到達していた.食塊の通過時間は,誤嚥しゃすい領域と考えられる喉頭蓋谷領域の通過時間であるVATにおいて回数指定咀嚼の場合に短縮され,前歯咀嚼で延長する傾向が見られた,

    【考察】論義方法の変化が嚥下動態に与える影響を検討した.回数指定咀嚼は嚥下反射が早期に惹起されるため誤嚥予防として有効であり,前歯咀嚼は嚥下反射が遅延するため誤嚥しゃすい可能性が示唆された.

  • 平山 友恵, 神津 玲, 藤島 一郎, 大野 友久, 朝井 政治, 岩崎 静乃, 高柳 久与, 岡本 彩, 植松 宏
    2007 年 11 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2007/08/31
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル フリー

    【目的】摂食・嚥下障害患者では気道分泌物貯留のためにしばしば排痰法を中心とした呼吸理学療法が必要となる.しかし,口腔内や上気道の強い乾燥状態を合併すると,十分な効果が得られない場合がある.そこで,その対策として口腔ケアの併用が有効ではないかと考え,呼吸理学療法前の口腔ケアの実施が,分泌物除去に及ぼす影響について検討した.

    【対象と方法】平成16年1月から平成17年2月までの期間,当院入院中の患者で口腔ケアと呼吸理学療法を実施中の誤嚥性肺炎患者25例(男性23例,女性2例,平均年齢81.4歳)を対象とした.呼吸理学療法は,口腔ケア直後に実施する場合と単独で実施する場合の2つの条件で連続2日以内にランダムに適用した.口腔ケアは同一の歯科衛生士が行い,呼吸理学療法も同一の理学療法士が行うこととし,最終的に吸引によって分泌物を除去した.上記2種類の条件による吸引分泌物重量とその性状,100mm visual analog scale(VAS)による吸引操作の行い易さを評価し,比較検討した.また口腔内は,口腔乾燥の程度を評価した.

    【結果と考察】吸引分泌物重量ならびに吸引操作の行い易さを評価したVASについて検討したところ,口腔ケア実施時で有意な増加,改善が認められた(p<0.01).また口腔乾燥状態が重度の場合,口腔ケア実施時で吸引分泌物重量が有意に増加し,吸引操作の行い易さも有意に改善した.さらに疾の性状で分けて検討すると,膿性痰の場合,口腔ケア実施時で吸引分泌物重量が有意に増加し,吸引操作の行い易さも有意に改善した.口腔ケアによって口腔内さらには咽頭,上気道の湿潤化が得られ,分泌物の移動が容易になった結果と推察された.よって,口腔乾燥が重度の場合で膿性痰の場合,呼吸理学療法は直前に口腔ケアを実施することでその効果を高めることができると示唆された.

短報
  • ―摂食・嚥下カンファレンスシートを導入して―
    斉藤 晴子, 酒井 奈美香, 稲垣 就平, 小池 澄子, 萩原 良治, 光増 智, 武田 利兵衛, 小西 正訓
    2007 年 11 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2007/08/31
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル フリー

    【目的】多職種参加による摂食嚥下カンファレンスで使用しているカンファレンスシート上の評価項目について,藤島の嚥下グレード1)を基準に妥当性を確認することを目的とした.

    【対象と方法】対象は,脳血管疾患患者29名と脳挫傷2例で,計92回分のカンファレンスシートを使用した.カンファレンスシートの評価項目は,脳神経外科又は神経内科主治医による,食物認知・自発性低下・麻痺(上肢)・失調・気管切開,耳鼻咽喉科医による舌の運動・鼻咽腔閉鎖・舌根挙上・声門閉鎖・喉頭挙上,言語聴覚士(以下ST)による反復唾液飲みテスト(以下RSST)・嚥下反射・声質の異常・指示に従う能力(以下従命力)の14項目である.それぞれの評価項目を得点化し嚥下グレードとの間に相関があるか,また,評価項目を説明変数,嚥下グレードを目的変数とし,重回帰分析を行い,検討した.

    【結果と考察】①評価項目の総得点と嚥下グレードに有意な正の相関を認めた.②評価時点の嚥下グレードと有意な相関を認めた評価項目は,食物認知・自発性低下・舌の運動,鼻咽腔閉鎖・舌根挙上・声門閉鎖・RSST・嚥下反射・声質の異常・従命力であった.また重回帰分析から,自発性低下・失調・声門閉鎖・嚥下反射・声質の異常の評価項目を変数とする重回帰式が,評価時点の嚥下グレードに有意の回帰性を示した.③2回以上カンファレンスを実施した26例に対し,初回評価14項目と,訓練終了時の嚥下グレードの相関を分析した結果,舌根挙上が有意な相関を認めた.重回帰分析も舌根挙上の評価項目のみが終了時点の嚥下グレードに有意の回帰性を示した.

    以上から,私たちの使用しているカンファレンスシートは,嚥下状態を知る上で一定の妥当性があると思われた.

症例報告
  • 池上 加奈子, 小島 千枝子, 藤島 一郎, 高橋 博達
    2007 年 11 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 2007/08/31
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル フリー

    脳幹梗塞後嚥下障害の摂食訓練中に,誤嚥による胸膜炎を併発した症例を報告する.訓練開始時嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing)で誤嚥のない安全な摂食条件を設定して,慎重に段階的摂食訓練を実施した.しかし,ピューレ食から咀嚼を必要とする食物形態に移行したところ,胸膜炎を発症した.24日間の絶飲食後のVF所見を参考に,奥舌を挙上して「き」と発音する構えを作り,喉頭挙上を促してから食塊を咽頭に送り込んで,食塊が喉頭蓋谷の位置にある段階で力強く嚥下するという,新しい訓練方法を考案した.声帯内転術施行後,この方法を用いて慎重に摂食訓練を再開した結果,トラブルの一因と考えられた咀嚼を必要とする食物形態まで摂食可能となり,胸膜炎発症前よりも高い摂食レベルに達した.トラブルの原因として,嚥下造影検査時には誤嚥がみられなくても,実際の臨床場面ではピューレ食を摂食している段階ですでに誤嚥していた可能性が考えられた.さらに,咀嚼を必要とする食物形態に移行したことで,タイミングのずれを助長し,誤嚥の機会を増やした可能性が考えられた.

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