2007 年 11 巻 2 号 p. 130-136
【目的】多職種参加による摂食嚥下カンファレンスで使用しているカンファレンスシート上の評価項目について,藤島の嚥下グレード1)を基準に妥当性を確認することを目的とした.
【対象と方法】対象は,脳血管疾患患者29名と脳挫傷2例で,計92回分のカンファレンスシートを使用した.カンファレンスシートの評価項目は,脳神経外科又は神経内科主治医による,食物認知・自発性低下・麻痺(上肢)・失調・気管切開,耳鼻咽喉科医による舌の運動・鼻咽腔閉鎖・舌根挙上・声門閉鎖・喉頭挙上,言語聴覚士(以下ST)による反復唾液飲みテスト(以下RSST)・嚥下反射・声質の異常・指示に従う能力(以下従命力)の14項目である.それぞれの評価項目を得点化し嚥下グレードとの間に相関があるか,また,評価項目を説明変数,嚥下グレードを目的変数とし,重回帰分析を行い,検討した.
【結果と考察】①評価項目の総得点と嚥下グレードに有意な正の相関を認めた.②評価時点の嚥下グレードと有意な相関を認めた評価項目は,食物認知・自発性低下・舌の運動,鼻咽腔閉鎖・舌根挙上・声門閉鎖・RSST・嚥下反射・声質の異常・従命力であった.また重回帰分析から,自発性低下・失調・声門閉鎖・嚥下反射・声質の異常の評価項目を変数とする重回帰式が,評価時点の嚥下グレードに有意の回帰性を示した.③2回以上カンファレンスを実施した26例に対し,初回評価14項目と,訓練終了時の嚥下グレードの相関を分析した結果,舌根挙上が有意な相関を認めた.重回帰分析も舌根挙上の評価項目のみが終了時点の嚥下グレードに有意の回帰性を示した.
以上から,私たちの使用しているカンファレンスシートは,嚥下状態を知る上で一定の妥当性があると思われた.