日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
総説
小児の摂食・嚥下リハビリテーションにおける最近の国際的動向
西尾 正輝
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2008 年 12 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

アメリカを中心とする海外における過去約10年間における小児の摂食・嚥下障害の国際的進展状況を文献学的に通観し,その動向を概説した.

食事の問題は小児全体の25~45%に認められ,発達障害児の33~80%に問題があると報告されている.医学の技術的進展は結果として,嚥下障害患児数を増大させていると推察されている.

小児の嚥下障害において認められる典型的な異常所見は,口腔の運動機能の異常,拒食,偏食,食塊の送り込み困難,誤嚥,胃食道逆流症など多様である.口腔の運動機能の異常は脳性麻痺児やダウン症児で特に高率でみられるのに対して,自閉症スペクトラム児ではこうした問題はみられず,知覚や原因不明の胃腸の問題に起因する偏食や拒食を呈する傾向にある.

評価手技では,各種の質問紙法や食事場面の客観的評価法が開発され,精密検査としては,嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(FEES)が普及し,諸種の検査マニュアルやガイドラインが示されている.また,多数の総合的な評価フォームが提唱されている.

治療手技では,飲食物の形態の調節,適切な栄養法の選択手技,食事環境の調整,運動機能や感覚機能の改善訓練,適切な人工乳首と哺乳瓶の選択,姿勢の調整法,頬・下顎の支持法,ペーシング,スプーン・コップ・ストローの使用訓練,咀嚼訓練,食事計画,コンティンジェンシー・マネージメント,シェイピング,GERDに対する胃酸分泌抑制剤の使用,外科的治療などの報告が蓄積されている.また新生児集中治療室における摂食・嚥下障害児のリハビリテーションも積極的に取り組まれる傾向にある.

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© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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