症例は47歳男性.延髄血管芽腫再発に伴い,嚥下障碍,嗄声,申枢性低換気が増悪して当院脳神経外科入院,気管切開と腫瘍全摘術施行.その後気管孔を閉鎖したが,誤嚥性肺炎を起こし,再度気管切開を要した.しかし,肺炎は繰り返したため,嚥下造影を行なったところ,嚥下反射パターンの異常,咽頭蠕動の消失,食道入口部の開大不全などに起因する誤嚥を認め,かつ咳嗽反射が全く惹起されないことが分かった.リハビリを行うも改善せず,また咳嗽反射の消失もあり,気道と食道の分離以外に誤嚥を予防できないと考えられたため,喉頭摘出術およびボイスボタン留置術を行なった.術後経過は良好で,現在は全量通常の食事を経口摂食している.また,ボイスボタンによる代替発声が容易に可能であり,音声言語機能も良好に保存することができた.
通常誤嚥防止手術では音声が保存されないが,今回の方法は,摂食による誤嚥の防止と音声の保存を両立できる利点がある.