日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
非温度依存性即席ゲル化剤の開発とそのテクスチャー特性
西尾 正輝森下 博己飯野 登志子田中 康博
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2008 年 12 巻 1 号 p. 49-60

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抄録

ほとんど温度に関わりなく即座にゼリー状に凝固させることが可能なゲル化剤を開発した.日本人にとって代表的な食品である粥,みそ汁,お茶を測定試料として物性評価(硬さ,凝集性,付着性)ならびに官能評価(おいしさ,べたつきやすさ,まとまりやすさ,残留性,飲み込みやすさ)によりそのテクスチャー特性について検討したところ,主に以下の結果を得た.

1.粥を用いて異なる温度(55~30℃)でゼリーを作成・測定した.その結果,硬さ,凝集性,付着性における品温による差は乏しく,いずれの品温の粥ゼリーも妥当な物性を有した.官能評価では,いずれの品温においてもすべてのパラメーターで良好な結果を得た.

2.液状の食品を用いて比較的高温(75℃)で調理したゼリーについて,温度の低下に伴うテクスチャーの変動性について検討した.その結果,50~20℃の温度範囲で硬さは若干変動したが厚生省の基準値を大きく下回り妥当な範囲内であり,凝集性と付着性は温度の影響をほとんど受けず安定していた.官能評価ではいずれの品温においてもすべてのパラメーターで良好な結果を得た.

3.液状の食品を用いて比較的低温(10℃)で調理したゼリーについて,温度の上昇に伴うテクスチャーの変動性について検討した.その結果,10~30℃の温度範囲で硬さは品温により若干変動したが厚生省の基準値を大きく下回り妥当な範囲内であり,凝集性と付着性も温度の上昇に伴う変動幅は比較的小さくいずれの品温のゼリーも妥当な物性を有した.官能評価ではいずれの品温においてもすべてのパラメーターで比較的良好な結果を得た.

以上から,本ゲル化剤は,粥ゼリーを異なる温度で調理した場合も,液状の食品を用いて調理したゼリーの温度が変動した場合も,妥当なテクスチャーを維持することが示唆されたといえる,本結果は嚥下障害患者が日常生活においてエネルギーや水分を摂取するにあたり本ゲル化剤の利便性と有用性を示唆するものである.

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© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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