2009 年 13 巻 1 号 p. 26-30
【目的】嚥下反射改善作用を有する薬剤が,経管栄養患者においても呼吸器感染による発熱を予防するかどうかを検討した.
【対象】2005 年10 月~ 2007 年9 月に経管栄養を行った入院患者.
【方法】年齢,経管栄養投与日数,38℃ 以上の発熱日数,抗生物質点滴静注投与日数を月ごとに集計した.年齢は誕生日から毎月計算し集計した.発熱・抗生物質投与は経管栄養中に始まった場合に限定し,喀痰や肺音などから呼吸器感染と推測できるものとし,尿路感染など経管栄養と無関係な発熱は除外した.発熱日数と抗生物質投与日数を,(1)パーキンソン病/症候群以外でのアマンタジンおよびACE 阻害薬の投与の有無で2 群に分けて比較した.(2)抗血小板薬はアスピリン,シロスタゾールの単剤投与間で比較した(他の抗血小板剤は少数だった).
【結果】対象285 人,平均年齢76.7 歳.脳血管障害226 人,神経筋疾患28 人,その他31 人.経鼻胃管258 人,胃瘻64 人,腸瘻1 人(重複あり).発熱日数17.5 日/ 年,抗生物質投与日数31.3 日/ 年.(1)嚥下反射改善薬:服用あり26 人,なし273 人,年齢はそれぞれ74.9±9.8 歳,75.9±11.5 歳(p=0.0237).発熱日数8.3 vs 18.3 日/ 年(p=0.0002),抗生物質投与日数18.5 vs 32.3 日/ 年(p<0.0001)と服用あり群で有意に少なかった.(2)抗血小板剤:アスピリン30 人,シロスタゾール30 人,年齢はそれぞれ75.4 ±14.3 歳,78.1±5.2 歳(p=0.0022).発熱は14.4 vs 10.0 日/ 年(p<0.0001),抗生物質投与日数28.1 vs 20.0 日/ 年(p<0.0001)とシロスタゾール群は有意に少なかった.
【考察】嚥下反射改善作用を有する薬剤は経管栄養中の発熱,抗生物質投与を減少させた.嚥下反射の改善により,経管栄養患者でも誤嚥性肺炎を予防できる可能性が示唆された.