日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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短報
間欠的口腔食道経管栄養法(OE 法)用口腔内装置の考案
大野 友久藤島 一郎西村 立藤本 江実藤島 百合子
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2009 年 13 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

【緒言】間欠的口腔食道経管栄養法(Intermittent-oro-esophageal tube feeding:以下,OE法)はさまざまな点で優れた栄養方法であり,多くの摂食・嚥下障害患者に適用されている.今回,われわれは軽度の認知症および高次脳機能障害を認め,チューブを噛んでしまうなどの問題から,OE 法施行が困難と思われた摂食・嚥下障害患者に安全にOE 法を適用するために,特殊な口腔内装置を適用した症例を報告する.

【対象と経過】72 歳の男性で,左後頭葉皮質下の脳出血後遺症による摂食・嚥下障害および高次脳機能障害の患者.入院前の摂食条件は藤島の「摂食・嚥下障害患者における摂食状況のレベル」でLv7 であった.誤嚥性肺炎にて入院となり,一時的に経口摂取中止となったが,摂食・嚥下機能について評価のうえ,ゼリー食から摂食訓練を開始し,最終的にLv6 まで改善した.水分量が十分確保できず,OE 法にて水分摂取を補助した.その際,高次脳機能障害に伴う注意障害のため,チューブを噛んでしまうなどの問題行動があり,OE 法の安全な実施が困難であったため,口腔内装置を適用した.

【口腔内装置】上顎に装着する装置であり,特徴としては,臼歯部の咬合を挙上してあることと,チューブを通すトンネル状の穴が上顎左臼歯部口蓋側面に付与されている,という2 点である.咬合の挙上は,前歯でチューブを噛んでしまうことを防止し,さらにチューブを口腔内に挿入しやすくする効果がある.トンネル状の穴にチューブを通すことは,臼歯部でチューブを噛んでしまうことや,舌でチューブを押し出すことの防止効果,さらにチューブを咽頭に挿入しやすくするガイドの効果がある.

【結果と考察】チューブを噛んでしまうなどの問題から,OE 法適用困難と思われた摂食・嚥下障害患者に,本装置を適用することで,OE 法が安全に実施可能となった.本装置はOE 法の適用範囲を拡大し,摂食・嚥下障害患者のQOL 向上に寄与できる可能性がある.

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© 2009 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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