2009 年 13 巻 3 号 p. 197-206
粘稠溶液の物性を簡易的に測定する方法として,Line Spread Test(LST)法や傾斜法などが考案されているが,とろみ調整食品で調製した粘稠溶液の評価における有効性を検証した例は限られている.そこで,LST 法をとろみ調整食品で調製した粘稠溶液の物性の簡易評価に用いることができるかどうかを検証するために,LST 一部改変法(シリンジ法)と粘度,かたさ,付着エネルギーの関係を解析した.
まず,3 種類のキサンタンガム系とろみ調整食品を蒸留水,牛乳,オレンジジュースにさまざまな濃度で溶解して調製した試料のシリンジ法測定値と,粘度,かたさ,付着エネルギーとの関係を解析した.試験に使用したすべてのキサンタンガム系とろみ調整食品と溶媒の組み合わせにおいて,シリンジ法測定値は粘度,およびかたさと高い直線的相関があり,付着エネルギーとは,対数関数的な相関が認められ,シリンジ法測定に適した粘度範囲は1,000~7,000 mPa・s と判断された.
次にキサンタンガム系,デンプン系およびグアーガム系とろみ調整食品を用いた牛乳溶液の物性を測定し,シリンジ法測定値とその他の物性との回帰分析を行った結果,粘度測定時の回転数が低くなるほど粘度とシリンジ法測定値の寄与率が高まることが示された.また,キサンタンガム系およびグアーガム系とろみ調整食品溶液のシリンジ法測定値は,粘度,かたさ,付着エネルギーの3 成分が複合的に影響を及ぼしていることが重回帰分析によって示された.
以上の結果より,シリンジ法測定値にはさまざまな物性特性が反映しているため,主要なとろみ成分が異なれば,各物性因子の影響度合いも異なることが示唆された.したがって,LST 測定を調理現場で利用する際には,LST の特性を踏まえた測定条件や評価指標を設けて導入することが望ましいと考えられる.