日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
13 巻, 3 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 山本 敏之
    2009 年 13 巻 3 号 p. 165-175
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    【目的】嚥下造影検査(VF)から,‘ヒステリー性’嚥下障害(HSD)患者と神経筋疾患(NMD)患者を鑑別することを目的とした.

    【対象と方法】ヒステリー球とは異なり,口腔の食物を咽頭に送り込むことに困難を訴え,神経学的検査,画像検査などで器質的な異常を認めない患者16 人(34.4±10.8 歳)をHSD 群とした.認知症,高次脳機能障害,統合失調症,うつ病,中枢性摂食異常症は否定した.対照群として,健常対照(NC)群,筋萎縮性側索硬化症(ALS)群,筋疾患(MD)群,パーキンソン病(PD)群をそれぞれ30 人とした.液体バリウム(Ba)(液体)とBa 加コンビーフ(固形物)で嚥下造影検査(VF)を行った.HSD 群と対照群のVF所見を比較した.

    【結果】閉口安静時の側面像から,咽頭前後長はHSD 群とNC 群とで有意差がなく,ALS 群,MD 群はより長かった.HSD 群の液体の嚥下動態はNC 群と類似し,誤嚥を認めず,嚥下後の咽頭残留の頻度が少ないことを特徴とした.HSD 患者5 人は,口腔から咽頭への液体の送り込みを何度も中断し,少量の液体を嚥下した後,嚥下運動開始前の舌の形態に戻ることを繰り返した.これは対照群にはみられない所見であった.固形物のVF では,HSD 患者3 人が咀嚼運動後,嚥下することができず,検査を中止した.HSD 群の固形物の嚥下動態は,NC 群ともNMD 群とも類似しなかった.HSD 患者の固形物の嚥下動態は,咀嚼中に第二期輸送が惹起されず,口腔で嚥下反射が惹起されることを特徴とした.

    【結論】神経筋疾患との鑑別に有用なHSDのVF所見は,咽頭前後長が延長していないこと,液体を誤嚥しないこと,固形物の咀嚼と第二期輸送が分離していること,嚥下後の食物の咽頭残留がないことであった.HSD 患者は液体の飲み込みを何度も中断する所見を認めることがあり,「間歇的な送り込みの停止」と呼ぶことを提唱した.

  • ―ラット誤嚥モデルを用いた検討―
    三木 新也, 山村 泰久, 日野 和夫, 宮下 警一, 近藤 康得, 才藤 栄一
    2009 年 13 巻 3 号 p. 176-182
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    高齢者の増加に伴い,脳血管疾患などによる摂食・嚥下障害を有する患者が増加している.摂食・嚥下障害者はリハビリテーションを行い,機能回復を目指すが,その際にゼリー状食品を使用することが多い.ゼリー状食品は変形性や凝集性に富み,滑らかで食べやすいことが用いられる理由とされている.摂食・嚥下障害患者の機能回復トレーニングでは,誤嚥の危険性があるので,誤嚥を前提とした対策が求められる.しかしながら,造影に用いられる硫酸バリウムや各種ゲル化剤を誤嚥した際の生体に与える影響について詳細に検討した報告は少ない.

    そこで本試験においては,嚥下造影検査に用いられる硫酸バリウム,各種ゲル化剤(ゼラチン,カラギナン,寒天)を用いて作製したゼリーを無処置ラットの気管内に投与する強制誤嚥モデルを用い,それらが肺組織,機能に与える影響を検討した.また,ゼリーの物性を測定することで,誤嚥時の物性が肺機能に与える影響についても検討した.

    その結果,硫酸バリウムを誤嚥した場合,肺組織の炎症反応が惹起されるがその反応は軽微であり,また生食,ゼラチンゼリーを誤嚥した場合も炎症反応はほとんどみられなかった.一方,カラギナンゼリー,寒天ゼリーの場合には,炎症反応の亢進が認められた.いずれの場合も,肺のガス交換機能の指標となる血液pH,酸素分圧,二酸化炭素分圧には影響を与えなかった.これらゼリーの物性を比較すると,25℃~ 37℃ の範囲においては,温度の上昇とともにゼリーの破断強度が低下した.特にゼラチンにおいては,体温付近では完全に溶解し,液状であった.

    以上の結果より,摂食・嚥下障害者に用いられるゼリーは主に物性面で嚥下しやすいか否か,つまり誤嚥しにくいゼリーか否かという点が最も重要であることに変わりはないが,万が一誤嚥した場合の物性由来の肺における安全性を熟知したうえで使用すべきであると考えられた.

  • ―咀嚼と嚥下の回数・時間,口腔内残留量―
    宅見 央子, 中村 弘康, 福田 真一, 松田 紫緒, 小城 明子, 大野 友久, 白石 浩荘, 米谷 俊, 藤島 一郎, 植松 宏
    2009 年 13 巻 3 号 p. 183-191
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,①健康成人30 名,②試験食品であるビスケットの摂食・嚥下に問題のない一般高齢者20 名,③リハビリテーション科外来通院中の脳血管障害後遺症患者11 名(以下,「リハ患者」)に一般のクリームサンドビスケット(以下,一般品とする)と,口どけのよいクリームサンドビスケット(以下,低付着性品とする)を摂食させ,摂食時の咀嚼回数・時間,嚥下回数・時間の観察評価と,自由嚥下後の口腔内残留量を測定することにより,安全性および日常の食生活への応用の観点からビスケットの物性と摂食・嚥下機能との関係を検討することである.

    健康成人と高齢者の咀嚼回数および,全3 群の咀嚼時間においては,一般品に比べて低付着性品が有意に低値を示した.対象者間の比較においては,一般品と低付着性品の両方で,リハ患者と高齢者の咀嚼回数および咀嚼時間は健康成人に比べて有意に多かった.また,健康成人と高齢者の嚥下回数,および健康成人の嚥下時間においては,一般品に比べて低付着性品が有意に低値を示した.健康成人では,一般品と低付着性品の口腔内残留量に差がなかったが,高齢者とリハ患者では,一般品に比べて低付着性品の口腔内残留量が有意に少なかった.健康成人と高齢者では「口の中での付着」「口どけのよさ」などにおいて,一般品と低付着性品に有意な差がみられ,低付着性品のほうが高い評価を得た.

    摂食・嚥下機能の低下しているリハ患者や高齢者は,一般品と低付着性品のいずれにおいても,咀嚼回数・時間を健康成人より増加して対応していた.しかし,口腔内残留量は健康成人より有意に多かった.

    以上の結果より,低付着性品は,高齢者などの咀嚼・嚥下機能低下者に適した食品であり,咀嚼・嚥下機能低下者には,口腔内に残留しにくい食品の提供が重要であることが示唆された.

  • 金森 大輔, 加賀谷 斉, 横山 通夫, 才藤 栄一, 尾崎 研一郎, 岡田 澄子, 馬場 尊
    2009 年 13 巻 3 号 p. 192-196
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    【目的】咽頭期嚥下運動には系列的な舌の食塊移送運動を伴うものと,伴わないものが知られている.本研究では前者をCPS(consecutive pharyngeal swallow),後者をIPS(isolated pharyngeal swallow)として,両者の舌骨運動軌跡を比較した.

    【対象と方法】摂食・嚥下障害のない健常人53 名を対象とした.被験者にバリウム含有コンビーフ4 g と液体5 ml の混合物を摂取させた際の咀嚼嚥下について,嚥下造影を2 試行した.記録された映像から各試行の1 嚥下目と2 嚥下目をCPS とIPS に分け,それぞれの舌骨運動の解析を行った.水平,上下方向の最大移動距離,嚥下反射後舌骨が上前方へ移動し停止した位置までの距離と要した時間を計測した.距離についてはC3 椎体前縁の長さで除して体格補正をした.

    【結果】53 人106 試行中,1 嚥下目ではIPS 26 試行,CPS 80 試行,2 嚥下目ではIPS 0 試行,CPS が106 試行生じていた.1 嚥下目にIPS を認めた18 名26 試行をA 群,1 嚥下目にCPS を認めた症例から年齢を合致させて選んだ20 名30 試行をB 群として両群の舌骨軌跡を比較した.A 群の年齢は61±17 歳,B 群は61±18 歳であった.A 群では3.6±0.9 回で食塊すべてを嚥下していたが,B 群では2.6±0.9 回(いずれも平均値±標準偏差)であり,A 群で嚥下回数が有意に多かった.IPS はCPS に比し水平,上下方向での最大移動距離,嚥下反射後舌骨が前上方へ移動し停止した位置までの距離と要した時間がいずれも有意に小さかった.

    【結論】IPS は小さく,速く行われる咽頭期嚥下運動であり,通常の嚥下でも生じている気道防御的な嚥下運動と推測された.

  • 中村 愛美, 吉田 智, 岩品 有香, 大宿 茂, 鈴木 靖志
    2009 年 13 巻 3 号 p. 197-206
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    粘稠溶液の物性を簡易的に測定する方法として,Line Spread Test(LST)法や傾斜法などが考案されているが,とろみ調整食品で調製した粘稠溶液の評価における有効性を検証した例は限られている.そこで,LST 法をとろみ調整食品で調製した粘稠溶液の物性の簡易評価に用いることができるかどうかを検証するために,LST 一部改変法(シリンジ法)と粘度,かたさ,付着エネルギーの関係を解析した.

    まず,3 種類のキサンタンガム系とろみ調整食品を蒸留水,牛乳,オレンジジュースにさまざまな濃度で溶解して調製した試料のシリンジ法測定値と,粘度,かたさ,付着エネルギーとの関係を解析した.試験に使用したすべてのキサンタンガム系とろみ調整食品と溶媒の組み合わせにおいて,シリンジ法測定値は粘度,およびかたさと高い直線的相関があり,付着エネルギーとは,対数関数的な相関が認められ,シリンジ法測定に適した粘度範囲は1,000~7,000 mPa・s と判断された.

    次にキサンタンガム系,デンプン系およびグアーガム系とろみ調整食品を用いた牛乳溶液の物性を測定し,シリンジ法測定値とその他の物性との回帰分析を行った結果,粘度測定時の回転数が低くなるほど粘度とシリンジ法測定値の寄与率が高まることが示された.また,キサンタンガム系およびグアーガム系とろみ調整食品溶液のシリンジ法測定値は,粘度,かたさ,付着エネルギーの3 成分が複合的に影響を及ぼしていることが重回帰分析によって示された.

    以上の結果より,シリンジ法測定値にはさまざまな物性特性が反映しているため,主要なとろみ成分が異なれば,各物性因子の影響度合いも異なることが示唆された.したがって,LST 測定を調理現場で利用する際には,LST の特性を踏まえた測定条件や評価指標を設けて導入することが望ましいと考えられる.

  • 山本 敏之, 濱田 康平, 清水 加奈子, 小林 庸子
    2009 年 13 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    【目的】入院中の統合失調症患者の窒息リスクを評価するために,摂食・嚥下状況を調査し,窒息の既往がある患者に有意な内容を同定した.統合失調症患者の窒息リスクのスクリーニング法を考案した.

    【対象と方法】統合失調症患者の摂食・嚥下状況に関する13 の質問で構成された摂食・嚥下評価表を作成した.看護師が評価表を使って入院中の統合失調症患者98 人を評価した.診療録から対象の窒息の既往を調査し,窒息の既往の有無で2 群に分類した.評価表で得られた回答を2 群で比較した.判別分析によって,統合失調症患者の窒息の既往の判定に寄与する質問を同定した.統合失調症患者の窒息リスクのスクリーニング法を作成した.

    【結果】窒息の既往がある患者は4 人,窒息の既往がない患者は94 人であった.窒息の既往がある統合失調症患者に有意に多かった回答は,「義歯が必要であるが使用していない」 (p=0.03),「ほとんど丸飲みする」(p<0.01),「今までに盗食や隠れ食べがある」 (p<0.01),「飲み込みが改善した」 (p=0.03) であった.窒息の既往がある患者に有意に少なかったのは,「口に食物をためたままなかなか飲み込まない」 (p<0.01) であった.判別分析から作成したスクリーニング法は,「ほとんど丸飲みする:+ 1 点」「今までに盗食や隠れ食べがある:+ 1 点」「飲み込みが改善した:+ 2 点」で構成され,3 つの項目の合計が2 点以上のとき窒息のリスクが高いと判定した.このスクリーニング法は判別率92.9%,敏感度100%,特異度92.6% であった.

    【結論】統合失調症患者の窒息の背景には,摂食動作の異常や精神疾患による異常行動があり,飲み込みが改善した患者で発生しやすいことが示唆された.統合失調症患者の窒息のリスクマネージメントに有用なスクリーニング法と摂食・嚥下評価表を提案した.

短報
  • ―実物大口腔咽頭模型を用いたVF シミュレーションの試み―
    飯田 幸弘, 勝又 明敏, 藤下 昌己, 谷本 啓二, 山科 敦
    2009 年 13 巻 3 号 p. 215-224
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    【目的】 嚥下造影検査(VF)で観察される誤嚥には,検査試料の不随意咽頭滑落に引き続いて起こるものがある.このような誤嚥に対し,姿勢調節法,飲食物の物性調節が適応されることが多い.飯田らは口腔咽頭腔の実物大模型を被写体とした嚥下造影検査シミュレーションシステムを開発し,検査試料の滑落速度を検討している.今回は姿勢調節法と検査試料の物性が不随意咽頭滑落に与える影響を,VFシミュレーションを用いて検討した.

    【材料と方法】 生体の舌・咽頭部のコーンビームCT 画像データをもとに3 種類の実物大口腔咽頭模型を造形した.円柱状の石膏模型内部に頸部垂直位,頸部前屈位,左頸部回旋位の口腔咽頭腔を再現した.バリウム造影剤,およびバリウム造影剤に液状増粘剤を添加した試料,プリン,クリームなどの造影剤加模擬食品を調節した.テクスチャ解析システムにて,かたさ,付着性,および凝集性を計測した.

    各試料を模型の舌背の中央,左側,右側より滴下した.舌背斜面を滑落するシミュレーション画像を取得し,滑落速度と滑落経路を計測した.

    【結果】 90 W/V% に調整した液状バリウム造影剤試料は模型の種類によらず高速で舌背斜面を滑落し,5W/V% 以上の水溶性増粘剤の添加によって滑落速度を1/10 程度に減じた.頸部前屈位模型は他の模型と比較して液状バリウム造影剤の滑落速度を減じた.造影剤加模擬食品の滑落速度は液状バリウム造影剤より遅く,粘性を付与した造影剤試料より速かった.

    頸部垂直位模型,および頸部前屈位模型では,滴下位置によらず,試料は正中を滑落したが,頸部回旋位模型では,試料が回旋側を流れた.

    【考察】 液体の滑落速度を減速するのに頸部前屈位が有効な可能性が示唆された.

    能動輸送において,頸部回旋は非回旋側へ飲食物を誘導する.しかし,不随意咽頭滑落においては試料が意図せぬ経路をたどる.

  • 有岡 享子, 石田 瞭, 今井 美香子, 沼本 庸子, 足羽 孝子, 伊藤 真理, 岡田 恭子, 森 貴幸, 宮脇 卓也, 江草 正彦
    2009 年 13 巻 3 号 p. 225-230
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    気管切開術は嚥下機能評価には悪影響を及ぼすとされており,なるべく早期に抜去することが望ましい.適切な時期に評価を行い,それに基づいて経口摂取を開始していくことが必要である.本研究は,気管切開患者における嚥下機能評価方法の検討を目的とした.

    対象は平成19 年4 月から平成20 年3 月までに当科に紹介のあった気切患者のうち,38 人(女性13 人,男性25 人,平均年齢67 歳(15~88))とした.評価項目は初診時の年齢,原疾患,人工呼吸器管理に至った理由および舌の可動域評価,反復唾液嚥下テスト(RSST),Modified Evan's Blue Dye テスト(MEBDT)と,気切カフ上からの吸引物量とし,これらと初診から経口摂取開始までの日数の関係を調べた.

    その結果,原因疾患と経口摂取開始までの時間との間には関係は認めなかった.年齢と経口摂取開始までの日数には有意に相関を認め (p=0.0054),年齢が高くなるほど経口摂取開始が遅かった.舌可動性,RSST と経口摂取開始までの日数には有意な差は認めなかった.MEBDT,カフ上吸引物の量と経口摂取開始までの日数については有意に関係が認められた(p<0.0001,p=0.0003).

    舌の可動性やRSST では,気管切開患者における嚥下機能の評価は困難であると考えられた.MEBDT,カフ上吸引物量は初診から経口摂取開始までの日数と有意に関係があり,スクリーニング検査として有効であると考える.特にカフ上の吸引は看護師の日常業務のひとつであり,日常のケアの際に嚥下機能の評価も行えることは非常に有用であると考える.今後カフ上吸引物量の指標となる量を検討することが必要であると考えられた.

症例報告
  • ―初診時と最終評価時の摂食・嚥下機能の比較―
    髙橋 摩理, 萩原 聡, 日原 信彦, 向井 美惠
    2009 年 13 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    【目的】地域療育センター摂食・嚥下外来における摂食機能療法の指導効果を検討することを目的に,受診児の初診時と最終評価時における摂食機能状態について比較検討を行った.

    【対象】2003 年9 月から2006 年12 月までの2 年3 か月間に地域療育センター摂食・嚥下外来を受診した小児72 名中,1 年以上継続して摂食機能療法を行った60 名,男児31 名・女児29 名(平均年齢2.6±1.4歳)を対象とした.

    【方法】対象児の医療カルテおよび摂食・嚥下外来カルテから,受診回数,転帰,摂食・嚥下機能の変化を調査した.また,摂食機能変化に関連する要因の検討を行った.

    【結果】受診回数は一人平均5.8 回(2~10 回)であった.転帰は継続が49 名(81.7%),指導終了が6 名(10.0%),中断が2 名(3.3%)であった.摂食・嚥下機能5 項目を初診時と最終評価時で比較した結果,「嚥下時口唇閉鎖」は変化が認められなかったが,「捕食時口唇閉鎖」「食物の前歯での咬断」「スプーンからの水分のすすり飲み」は有意に改善した.摂食機能変化に関連する項目を検討したところ,「処理時の舌運動」と初診時年齢,受診回数との間に有意な関連が認められた.

    【考察】多職種が摂食・嚥下外来にかかわることの可能な当センターでは,専門性を生かした指導を行うことが可能であり,摂食機能の改善に関係していると推察された.

  • 田村 文誉, 菊谷 武, 楊 秀慶, 町田 麗子, 鈴木 文晴
    2009 年 13 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2020/06/28
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究では,過敏の症状を呈する学童期小児を対象とし,脱感作療法の効果について症例を通して検討した.

    【対象と方法】対象は,都内某普通小学校併設の特別支援学級に通学する障害を有する児3 名(児童A:8 歳6 カ月ダウン症候群男児,児童B:8 歳5 カ月脳性まひ男児,児童C:11 歳1 カ月脳性まひ女児)である.摂食指導担当の歯科医師,担当教諭,保護者が,それぞれ触感覚過敏について全身,特に顔面・口腔内を評価した.過敏の評価は,接触刺激によって拒否動作が惹起された場合を過敏と判断し,心理的拒否との鑑別を行った.脱感作療法の実施者は保護者であり,家庭にて1 日に1 回実施した.実施期間は,平成19 年2 月から平成20 年2 月までの1 年間とした.

    【結果】児童A では,過敏は開始1 カ月後には軽減し,1 年後には顔面の過敏の一部が完全に脱感作された.児童B では,1 年後に過敏の部位が著明に減少し,症状も軽度となった.児童C では,1 年後にも改善がみられなかった.

    【結論】1.触感覚過敏に対する脱感作療法は有効であるものの,すべての症例に効果的ではなかった.

    2.摂食指導における過敏の定義づけと,症状に応じた適切な脱感作療法の確立が重要であると考えられた.

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