2010 年 14 巻 1 号 p. 27-32
【目的】 食塊形成は,嚥下のプロセスにおいて非常に重要である.野原ら,佐々生らは,内視鏡を用いて咽頭にある食塊を直接観察することにより,食塊形成機能を評価できることを報告した.これまでに行われてきた口腔・咽頭の外で食塊を評価する研究では,食塊形成は咀嚼回数に影響を受けることが報告されている.本研究では,内視鏡を用いて嚥下直前の食塊を観察することにより,1)嚥下閾にある食塊の基準を明らかにすること,2)咀嚼回数と食塊形成の状態との関係を検討すること,の2 点を目的とした.
【方法】 30 人の健常成人を対象にした.被験者には,被験食である緑色と白色の2 色の米飯を普段通り食べるように指示した.そのときの咽頭に流れてくる食塊を,内視鏡を用いて「粉砕度」「混和度」「集合度」の観点から,その程度に合わせて点数化し,評価を行った.同時に,食塊を嚥下するまでの咀嚼回数を測定した.
【結果】 嚥下直前の食塊の点数評価は,集合度が最も高く,次いで混和度であり,粉砕度は比較的低かった.粉砕度と混和度は咀嚼回数の増加にともない増加し,有意な相関を呈した.集合度は,咀嚼回数の多寡にかかわらず高く,両者に相関は認められなかった.
【考察】 粉砕度と混和度は,これまでの報告と同様,咀嚼回数に影響されることが明らかとなった.咀嚼回数が少なく粉砕度や混和度が低くても,嚥下閾に達した食塊は集合度が高かったことから,嚥下閾には粉砕度や混和度よりも,集合度の上昇が重要である可能性が示唆された.