【目的】凍結含浸法は,食材の形状を維持したまま軟化させることができる加工技術である.本技術で処理した食材は,高齢者用食品や介護用食品として利用できる可能性があると考えた.本研究では,凍結含浸法で処理した軟化食材の提供に適した対象者を明らかにすることを目的として,咀嚼・嚥下機能の異なる高齢者を対象とした摂食評価を行った.
【方法】凍結含浸法で軟化処理したタケノコ,ゴボウ,レンコンおよびニンジンの4 種類の根菜類について,介護施設入所者65 名を対象に摂食評価を行った.普段の食事形態から対象者を,普通食群,キザミ食群,極キザミ食群およびミキサー食群の4 つに分類した.4 種類の凍結含浸食材を対象者に提供して,「見た目」,「硬さ」および「飲み込みやすさ」の3 項目について,普通を0 点とした± 2 点の5 段階で嗜好性を評価した.
【結果】凍結含浸食材の「見た目」の評価は,普通食群に比べて,キザミ食群,極キザミ食群およびミキサー食群のほうが高かったが,有意差は認められなかった.「硬さ」と「飲み込みやすさ」の評価は,対象者の普段の食事形態との間に有意な相関関係があり(p<0.05),咀嚼・嚥下機能が低下している群ほど高かった.特に極キザミ食群およびミキサー食群において,食べやすいという意見が多く,対象者の自発的な摂食を促す傾向が認められた.
【結論】凍結含浸法で処理した軟化食材は,極キザミ食やミキサー食を喫食している対象者に適している可能性が示唆された.本食材は,極キザミ食やミキサー食に代わりうる可能性があると考えられた.