2010 年 14 巻 3 号 p. 265-272
【目的】液状食品嚥下時の口腔相から咽頭相への移行段階における口蓋帆咽頭(いわゆる鼻咽腔)閉鎖機能の調節が,B 型粘度計によって測定された粘度とずり速度に依存する粘度の変化のどちらを参照しているかを口蓋帆挙筋活動を指標として検討した.
【対象と方法】対象は健常成人10 名とした.試料はB 型粘度計(12 rpm)での測定では同じ粘度(400±50 mPa・s)でも,ずり速度依存性粘度が異なるように,トロミ調整食品(キサンタンガム系・グアガム系・澱粉系)を緑茶に混和した試料A,B,Cを用いた.被験者ごとに測定した各試料の至適嚥下量の平均値を求め,それを個人の一回嚥下量として実験を行った.
【結果】10 名中8 名において,試料A 嚥下時の口蓋帆挙筋活動が,他の試料嚥下時のそれと比較して有意に大きかった(p<0.01).試料B,C 嚥下時の筋活動の間には有意差は認められなかった.
【考察】3 種の試料は,ずり速度が著しく小さいとき(0/s 近傍)には相互に粘度が異なるものの,B型粘度計での測定時(約2/s)以上のずり速度において,B とC はほぼ同じ非ニュートン特性をもち,A はこれらより低い粘度をもっていた.以上から,B 型粘度計(12 rpm)での測定時以上のずり速度で生じる粘度の変化に基づいて,嚥下時の口蓋帆咽頭閉鎖機能は調節され,B 型粘度計(12 rpm)で測定された粘度は口蓋帆咽頭閉鎖機能の調節には反映しない可能性が示された.