2010 年 14 巻 3 号 p. 273-278
小児科医より自閉症スペクトラム(以下ASD)と診断され,地域療育センター通園施設に1 年以上通園し,給食に参加している幼児54 名(男児44 名,女児10 名,平均年齢5.6 歳±0.6 歳)を対象に,給食場面における摂食・嚥下機能や食べ方についての評価を行い,以下の結果を得た.
1) 摂食・嚥下機能においては,嚥下機能は全員が獲得していたが,捕食,咀嚼機能は約20% が未獲得だった.
2) 摂食・嚥下機能と知的発達レベルとの関連をみると,知的発達遅レベルにより差がみられ,軽度と中等度(p<0.05),軽度と重度(p<0.01)の間に有意差が認められた.
3) 食べ方において,詰め込み,丸飲み,かき込みが常にみられるものが20% 前後みられたが,溜め込みをする児はほとんどいなかった.
4) かき込みや詰め込みは年齢が高い児,すなわち療育期間が長い児に少なかったが,有意差は認められなかった.
以上より,捕食,咀嚼機能は年齢よりも知的発達レベルとの関連が強く,機能獲得の困難さが推察された.これらの機能の獲得にあたり,摂食機能を客観的に評価するとともに,食事場面での関わりだけでなく,全身的発達を促す支援が重要と思われた.
かき込み,詰め込みは療育期間による差がみられ,療育場面での繰り返しの指導が食べ方の改善の一助となる可能性が示唆された.
さらに,感覚偏倚や偏食などASD の特徴的症状と摂食機能や食べ方との関連を調査する必要があると思われた.