2011 年 15 巻 1 号 p. 14-24
病院や要介護高齢者施設,障害児者施設などの給食施設において,摂食機能の低下を考慮して形態を調整した食種が設定されている.これらの物性特徴の標準化は喫食者の栄養管理および安全管理にきわめて重要であることから,早期の標準化が望まれているものの,未だそこには至っていない現状がある.そこで,既存の食種とその適応喫食者を整理し,それらを医学的エビデンスに基づき標準化する方法に着手した.本報では,既存の食種を整理することを目的としたアンケート調査の結果をまとめた.
全国の高齢者施設,病院,障害児者施設の計1,262 施設の給食担当管理栄養士・栄養士を対象に,摂食機能の低下を考慮した食種について,それぞれの呼称とその調理方法,物性特徴(主食は粘度,副食は硬さと大きさ,粘度),適応喫食者の特性の回答を求めた.
323 施設の主食693,副食895 食種を,物性特徴および調理方法から,主食7,副食15 に区分した.これらの適応喫食者の特性を整理したところ,「咀嚼・食塊形成」の機能低下には,大きさや硬さが調整された食種が特徴づけられた.「送り込み+嚥下反射・気道防御」の機能低下には,液状のものにとろみをしっかりとつけてまとめた“食べる”イメージの食種と,粒の有無にかかわらずゲル化剤で固めた食種が特徴づけられた.「咀嚼・食塊形成+送り込み+嚥下反射・気道防御」の機能低下には,飲める程度にとろみのついた,液状の食種や粒のある食種も抽出された.
適応喫食者の特性については,咀嚼困難,嚥下困難,むせといった各関連器官の機能低下の結果として現れる症状の回答が多く,回答者の摂食・嚥下機能を細分化する知識の不足,喫食者の摂食機能の把握不足が推察された.そのため,機能低下の細部を把握できなかったが,各区分の適応喫食者の特性については,医学的エビデンスに基づいた適否の検討が必要と考えられるものもあった.