【目的】摂食・嚥下障害を有する在宅療養患者を支える介護者の栄養状態と食事環境を明らかとすることを目的とした.
【対象】対象は,摂食・嚥下外来に通院中の慢性疾患患者の主たる介護者10 名(男性2 名,女性8 名),平均年齢は71.8±5.6 歳である.
【方法】介護者に対して身体測定と血液生化学検査を実施した.また,介護背景に対するアンケート調査を実施した.食事調査として,食品別摂取量と栄養素別摂取量を算出した.
【結果】血液生化学検査では,介護者10 名のうち,総タンパクが3 名で,アルブミンが5 名で基準値を下回っていた.プレアルブミン,レチノール結合タンパク,トランスフェリンは,概ね基準値内ではあるが下限に近い値を示した.総リンパ球数では7 名が基準値を下回っていた.微量元素では,鉄,亜鉛で半数が基準値を下回った.
アンケート調査では,自身の食事に無関心で,惣菜や漬物を利用している介護者が多かった.
食品別摂取量では,緑黄食野菜,魚介類,卵類,いも類の摂取量が少なく,豆類,肉類,菓子類の摂取量が多い傾向にあった.栄養素別摂取量では,脂質を除くすべての栄養素が不足傾向で,ビタミン類は全介護者が基準値の半分を下回っていた.
【考察】血液生化学検査と食事摂取状況の結果から,介護者の栄養状態は,現時点で低栄養とはいえないまでも,現在の食生活が継続されることで栄養状態が低下する低栄養予備軍であると思われた.
この問題を解決するためには,まずは,介護者自身が食事に関心をもてるような環境整備が必要であると考えられた.
【結語】在宅療養支援においては,患者だけでなく介護者も含めた,家族全体を支援することが重要である.
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