2011 年 15 巻 1 号 p. 2-13
現在多くのとろみ調整食品が開発,販売されているが,調製時の目安となるとろみ表現がメーカーごとに異なっているため,使用者にとってわかりにくい.そこで,とろみの状態の目安として的確な指標(モデル食品)を検討するため,とろみ調整食品を調製する際には必ず撹拌動作を行うという点に着目し,撹拌時の感覚評価を行い,力学的特性との関連性を検討した.
本研究で用いた濃度範囲のとろみ調整食品添加試料に対応するとろみ表現として,はちみつ状およびヨーグルト状が多く用いられていた.そこで,とろみ調整食品添加試料と,はちみつおよびプレーンヨーグルトとの比較を,感覚評価により行った.評価方法は,① 容器を傾けたときの流れやすさ,② 撹拌したときの抵抗,③ 液切れの状態,の3 項目である.力学的特性として,テクスチャー測定による硬さ,付着性,凝集性,コーンプレート型回転粘度計による粘性率の測定を行った.
感覚評価では,はちみつは,とろみ調整食品添加試料とはまったく異なる評価となり,とろみの状態を表すモデル食品としては適していないことが示された.その要因として,はちみつはニュートン流体であるが,とろみ調整食品添加試料およびプレーンヨーグルトは非ニュートン流体であることが影響していると示唆された.ずり速度の異なる2 点間以上の粘性率を測定することで,ニュートン流体を区別することが可能となった.
テクスチャー特性の硬さ―付着性,硬さ―凝集性の二次元グラフでは,とろみ調整食品添加試料およびはちみつ,プレーンヨーグルトのいずれも,ほぼ同範囲に分布しており,はちみつのようなニュートン流体様食品を区別することは困難であった.
とろみ調整食品を液状食品に添加するときには撹拌動作が伴うことから,テクスチャー特性のみではなく,回転粘度計による測定を加えて,指標となるモデル食品を選定することの重要性が示唆された.