日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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症例報告
シェーグレン症候群患者3 例のピロカルピン塩酸塩内服前後の嚥下造影像の変化
梅本 丈二青柳 直子北嶋 哲郎原 嚴喜久田 利弘
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2011 年 15 巻 2 号 p. 214-219

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抄録

【目的】シェーグレン症候群(SS)患者の嚥下困難の訴えは,高頻度にみられ,QOL低下をもたらす.唾液分泌促進薬であるピロカルピン塩酸塩の嚥下困難症状への有効性を検討する目的で,SS 患者3症例に対しピロカルピン塩酸塩内服前後での唾液分泌量や自覚的口腔乾燥症状,嚥下造影像の変化を分析した.

【対象と方法】原発性SS と診断された女性患者3 名を対象とした.年齢は,症例A が67 歳,症例B が45 歳,症例C は35 歳であった.ピロカルピン塩酸塩を症例A とB は15 mg/ 日,症例C は5 mg/ 日内服した.内服前後での唾液分泌量をガムテストにて,自覚的口腔乾燥症状をVAS にて,バリウム含有クッキー1.5 g の嚥下動態を嚥下造影検査にて評価した.

【結果】ピロカルピン塩酸塩内服1 カ月後の唾液分泌量は,症例A で0.7 ml/10 分増加,症例B で0.5 ml/10 分減少,症例C で18.0 ml/10 分の大幅増加が認められた.VAS 値は,症例A が91 mm から26 mm へ,症例B が52 mm から0 mm へ,症例C が79 mm から18 mm へ大幅に改善した.嚥下動態について,症例A は内服前にクッキー1.5 g を嚥下できなかったが,内服1 時間後には口腔咽頭通過時間56 秒で嚥下可能となった.症例B とC の内服1 カ月後の口腔咽頭通過時間は,それぞれ46 秒から38 秒,23 秒から13 秒に短縮した.

【結論】ピロカルピン塩酸塩内服後,3 例とも自覚的口腔乾燥症状とクッキーの口腔咽頭通過時間が改善したが,ガムテストによる唾液分泌量の変化には関連がみられなかった.安静時,唾液分泌の増加によって口腔内が湿潤し,食塊形成が円滑になった可能性が考えられた.

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© 2011 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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