日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
急性期脳梗塞および脳出血における嚥下障害の予後予測
―経口摂取の予測式―
池嵜 寛人原 修一清永 紗知黒木 はるか立野 伸一
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2013 年 17 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

【はじめに】急性期での入院日数が短縮される傾向にある近年,脳血管障害急性期の治療終了時における嚥下障害の予後予測はほとんど検討されていない.そこで,脳血管障害による嚥下障害を対象に,急性期の退院時に経口摂取可能となった要因を調査・分析し,急性期嚥下障害の予後予測の可能性を検討した.

【対象】2009 年3 月から2010 年3 月の1 年間に急性期病院である当院に入院となり,嚥下障害と診断され,言語聴覚士の機能評価を実施した脳血管障害例を抽出した.このうち,嚥下機能に影響を及ぼしうる他の変性疾患や外傷等を併発していない脳梗塞または脳出血例214 名を,本研究の対象とした.

【方法】1)調査方法: カルテから検討項目を選択し,後方視的に調査を行った.2)検討項目: 診療記録・画像所見から9 項目,臨床所見から11 項目を挙げた.3)解析方法: 退院時の栄養摂取方法から2 群に分類した.退院時に経管栄養などの補助栄養法がまったく不要で経口摂取が可能であった者を経口摂取群,部分的にでも経管栄養を用いていた者を経管栄養継続群とした.栄養摂取方法を目的変数,検討項目を説明変数として,最尤推定法に基づきロジスティックモデルへの当てはめを行った.なお,モデルに加える説明変数の選択方法は,変数削除の基準p 値をp>0.1(尤度比検定)として,ステップワイズ変数減少法を用いた.また,回帰モデルの妥当性については,自由度調整R2,Lack of Fit,Receiver Operating Characteristic Curve により,回帰診断を行った.

【結果】右半球のみの病変,Barthel Index>0,嚥下音良好,フードテスト4 点以上からなる予測式を,本研究では考案した.経口摂取可能となる予測式の感度,特異度は89.7%,78.5% であり,有効度は84.1%であった.

【結論】本研究で考案した予測式は,急性期病院で対象となるすべての脳血管障害患者における急性期病院退院時の経口摂取の可否を予測するうえで,有用な予測式である.

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© 2013 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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